駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

コクトーの『恐るべき子供たち』を読みました。

 
光文社の古典新訳シリーズは定期的に読んでいきたいなと思っています。
今回はずっと気になっていたタイトルのこの本を読んでみました。
今回も立派に病んでましたよ~。ああ、ほんと名作古典のこの病み具合がクセになってきたなぁ(笑)
 
この作品は、萩尾望都さんが漫画化されているそうです。
漫画の方は未読で、その情報は読んでる途中に知ったのですが、「なんかすっごい納得」と思いました。
萩尾さんの世界観にとても近い気がしたんですもの。
そんな幻想的で、耽美的、そして退廃的で背徳的な作品です(^^)
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
14歳のポールは、憧れの生徒ダルジュロスの投げた雪玉で負傷し、友人のジェラールに部屋まで送られ
る。そこはポールと姉エリザベートの「ふたりだけの部屋」だった。そしてダルジュロスにそっくりの
少女、アガートの登場。愛するがゆえに傷つけ合う4人の交友が始まった。
 
歪な愛情で繋がる姉弟エリザベートとポール。
互いに相手に対して強い愛情を持ちながらも、暴言を吐きまくり傷つけあう様子は、
以前読んだ「嵐が丘」のヒースクリフとキャサリンを思い出させました。
愛情表現の捻くれ具合はほんとそっくりなのだけど、作品の印象は全然違います。
嵐が丘」では、主人公たちの感情についていけないまま、
ただただ強烈なパワーに圧倒されてしまうのですが、
こちらの方では、その行為に至るまでの内面心理をこれでもかと詳細に描き出すのです。
そうすると、「恐るべき」と称される子どもの、残酷だったり非情だったりする心理に、
思い当たる節も感じられて、歪んだエリザベートとポールが全くの他人事には思えなくなってくるのです。
 
特に訳文にやられました。
他訳は読んだことないし、もちろん原文と照らし合わせたりもできませんので、
この本の訳がどれほど原文に忠実かは分かりませんが、
おそらく非常に難解であろう原文を、理解できるギリギリの日本語で書いてくださっている訳文で、
とても呑みこみやすかったように思います。
一見すれば、変わり者の登場人物ですが、
訳者の解釈が丁寧に込められた訳文は、その分かりづらい心理をきれいに紐解いてくれる感じでした。
 
本当にコクトーの執拗な内面心理の描写は、すごいです。
自分の中の卑怯とかずる賢さなどの見たくない心理を、陽の下に引きずり出されるようでした。
正直、エリザベートとポールの奥深い絆からくる難解さは、簡単に理解できるレベルじゃありません。
でもどこか自分にも重なる描写があって、自分の昔を再び理解し直すような想いでした。
子どもの頃の常識のない素直さや無邪気さって、やたら罪だったりするんですよね…。
 
随所に挟まれるコクトーのイラストも、なかなか味があって面白かったです(^^)
子どもの落書きのようかと思うと、やたら印象深い表情をしてたりするんですよね。
巧いのか下手なのか、絵心のない私には分かりかねましたけどね(^_^;)