駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『償い』 矢口敦子

「このミス」が毎年話題になるなど、現代の出版界で元気なのは
この「ミステリー」部門かなと思います。
それだけに、年々「ミステリー」作品が多様化してきて、
最近では、人間心理に迫ったミステリーが多くなったような気がします。
(いや、ミステリー専門で読んでるわけではないので、
私の、個人的で漠然としたイメージなんですけど…)
だから、「ミステリー」と銘打っても、
トリックを仕掛けたミステリーに人間模様を描き込んだり、
トリックは二の次で、人間描写に重きを置くような作品があったりします。

東野圭吾の「容疑者Xの献身」が話題を呼びましたが、
この作品は、私はトリックありきだと思ってます。
それに犯人の人間描写を加えて、味付けしてる作品であると思いました。
「感動」とよく表現されてましたけど、
あのトリックに普通、同情はできないですよね?
逆に社会問題や人間模様を描くのに重点をおいて、
この作品は「ミステリー」である必要はあったのか、
と思うようなものもあります。

今回の作品は、私にはどっちつかずに思えました。
現実から逃れてホームレスになった元医者。
彼が物語の探偵役を務めます。
さまざまな問題を抱えた家庭があり、
その崩壊とともに殺人が起こります。
その背景を興味深く読みつつ、
最後の種明かしも気になりつつ読み進めていったのですが、
最後のオチは、人間を描くのか、トリックを描くのか、
なんだかどっちつかずだなーと思ってしまいました。
たっぷりもったいぶった割に、
最後はあれよあれよと話が進んでしまって、
どこに気持ちの重点を置いていいかわからなかったんですよね。
私の読み方が下手だっただけなのかもしれませんが。
盛りだくさんに盛った割に、
何か浅かったな、という印象。

星二つってとこでしょうか。