駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『鳴いて血を吐く』 遠田潤子

今年最初に読んだ本(^_^;)
正月から旦那の実家だったのに、そこでこんなタイトルの本を広げてました…(笑)
他の本にすればよかったんだけど、ちょっと読みだしたら、
続きが気なっちゃって止まらなくなったんですもん~。

ドロドロした話はあまり好みではないのですが、なんか不思議なタイトルに惹かれ興味を持ちました。
なんかただならぬ雰囲気じゃないですか~。
このタイトルは「鳴いて血を吐くホトトギス」という中国の故事に由来した言葉からきてるようです。
作中で「泣いて血を吐く迦陵頻伽(美声を持って知られる神秘的な鳥)」
と置きかえられているように、歌姫となる女性・実果子を巡り、血縁を乱し、
様々な不幸がいり乱れるんです…。
時代は現代だけど、昭和初期のような閉鎖的な古い体質が残る田舎が舞台の話です。
徹底的な家父長制、旧家同士の因縁、蔵、井戸…と、ドロドロな雰囲気の設定満載。

<内容紹介>(amazonサイトより)
離婚して経済的に困窮しているギタリスト・多聞のもとに、人気歌手・実菓子のロングインタビューの
仕事が舞い込んだ。多聞と実菓子は幼いころ同じ家で育ち、しかも多聞の亡父と亡兄はともに実菓子の
夫であった――。

これだけ短い紹介文でも、家族の泥沼ぶりがわかるってもんですよー(笑)
血を分けた家族間の愛憎劇と言う、苦手分野の作品であったにもかかわらず、
続きが気になって気になってどんどん読めちゃいました。
不愉快要素を多く抱えた作品でしたけど、
文章が割とあっさり目で読みやすいので、さくさく読めます。
こういう話なら、もっとねっとりした文章が合うと思いますが、私にはこれでよかったかな。

展開が二転三転してこんがらがったり、真相がちょっと物足りなかったり、
最後の展開に詰め込み過ぎ感があったりなど、不満点はあるのですけど、
とにかく作品の引力がすごくて、この作品世界に引きずりこまれます。
一つ真相が明かされるたびに、印象が変わっていく登場人物たち。
一つの一つの真実が新たな視点を生み、登場人物たちをどんどん変えていくのには驚きました。
人は幾重にも嘘で塗り固められていることを思い知られます。
「嘘」は、誰かのためであったり、自分を守るためであったり、
辛い真実から遠ざけるためであったり、思いのすれ違いからくるものだったりするわけです。

演じることの罪。演じないことの罪。
幾層にも重ねられた愛情は、しだいに歪みを生じ、不幸の連鎖を生みだします。
その真相へと辿りつく過程で、人間の回りくどいもどかしさを思い知らされます。
人間、すべて本音で語り合えたら、こんなにこんがらがったりしないはずなのに…。
でもそれができないから逆に、その奥深さや込められた思いの深さも知ることができるのですけどね。

完成度で見たら、まだ不十分なところはある気がしますが、力のある作家さんだなと思います。
やっぱこういう力技で引っ張り込んでくれる作品は、私にとってはとても魅力的です(^^)

なので、星はちょっと甘めで四つです(^^)なんか偉そうな態度ですみません~><