駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『本にだって雄と雌があります』 小田雅久仁

非常に愛おしくなる本です。
面白かったですよー。笑って泣ける本です。思った以上に深かったです。

森見さんのような、上品なんだか下品なんだか分からなくなる文章(笑)や、
万城目さんのような果てしなく荒唐無稽なホラ話がお好きな方は、きっとハマると思います(^^)
古風な、持って回ったような言いまわしで、読むのにとても時間がかかるのですが、
それは面白さを損なう要因にはなりません。
むしろいつまでも物語に浸っていられることを感謝してしまうほど。
(ただし私のような図書館組は返却期限に迫られて、
勿体なくも最後慌てて読み進める羽目になるのですが…(^^ゞ)
この本は、できることなら購入して、毎日毎日じっくりのんびり楽しむべき本なのでしょう。
そんなに厚い本ではないですが、ページいっぱいに詰め込まれた文章は、
読めど読めど進まず、長ーく楽しめます(笑)

<内容紹介>(出版社サイトより)
旧家の書斎に響く奇妙な羽音。そこでは本たちが「結婚」していた! 深井家には禁忌(タブー)があった。本棚の本の位置を決して変えてはいけない。九歳の少年が何気なくその掟を破ったとき、書物と書物とが交わって、新しい書物が生まれてしまった──! 昭和の大阪で起こった幸福な奇跡を皮切りに、明治から現代、そして未来へ続く父子四代の悲劇&喜劇を饒舌に語りたおすマジックリアリズム長編。

あらすじを読むと、本と本の結婚について語られていく話のように思えますが、
メインは深井家一族語りです。もちろんそれに書物も大いにかかわってくるのですけどね。
半分くらいまでは、話も進まず、延々と一族語りに終始してます。
ああ、ずっと身内紹介だなー、この先いったいどんな展開が待ってるのか全然想像もつかないなー、
なんて思いながらも、「ま、面白いからいいか」と読み進めました。
だってねぇ、ちょっと堅苦しいどこか真面目腐った口調で、
アホのようなホラ話がとどまることを知らぬ勢いで語られてんだもの。
身内語りやホラ話がボケなら、語りでが突っ込みで、その漫才のようなリズムがたまらないんです。
そうして楽しみながら読み進めていくと、半分ごろから本題に入ります。
そこからはなんというか、もう怒涛。
前半ダラダラと関西人の面白い喋りを聞くような語りが続くと思ったら、
後半、突然話が深みを増して、話の展開は遥かかなたへと飛び立っていくのです。
でも無駄にも思えた前半部分が、後半の圧倒的展開のちゃんと布石になっていて、
このトンデモ連中ならこんなトンデモ展開もありだわ、って感じになってくるんです。

話のメインは語ってる博とその祖父與次郎だけども、結局4代にまたがって描かれることになるのかな。
時系列が行ったり来たりするので、できたら簡単な家系図を手元に書きながら読むと分かりやすいかも。
まあ、混乱したところで、さして問題はないですが(笑)

この本に詰め込まれたのは、本への愛と家族への慈愛。
そこにたどり着くと、笑っていたばかりだったのが、やがて泣き笑いに変わってきます。
そして最後読み終えると、本を抱きしめちゃいたくなるんです。
そこに書かれている話も愛しいし、そして本自体への敬愛も込み上げてきて。

本っていうのは、誰かの人生なんですよね。その深淵をこの本で覗き見た感じがしました。
世代をつないでいく人の人生は、ひたすら繰り返される大いなるマンネリであるけれども、
細部に目をやると、そこには無限のドラマが詰まってるんです。
奇しくも繰り返される人生は、何かを積み重ねゆく作業で、それは円環のように巡っているもの、
…やがて永遠というものに繋がっていくんでしょう。

星は四つ。
内容についてはあまり触れませんでしたので、どんな本か分かってもらいづらいですね…(^^ゞ
でも実際に読んでみて、是非翻弄されていただきたいです。