駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『空耳の森』 七河迦南

七河さんの「七海学園シリーズ」、「七つの海を照らす星」「アルバトロスは羽ばたかない」が
どちらも最後に大どんでん返しがあって、「もう一度、読み返したい!」と思っておりました。
新作「空耳の森」はこのシリーズにリンクしているというので、
「これはいい機会だ」と思って、前作二作を読み返してからの読書でした。
(ネタばれ後に読み返すと、本当に細かく伏線やヒントが散りばめられていて驚かされました。
機会があれば、みなさまもぜひ再読してみてください)
 
前作を読んだ直後でしたので、細かい記述で誰のことかすぐ見当がつく部分と、
逆にこの人物は誰のことなんだろうと、知識が新鮮な分(笑)、むやみに悩んで余計混乱してしまうこととあり、
純粋に短編ミステリとして読めなかったところがありました…(^_^;)
素直な読み方ができなかったので、まともな感想が書けません~。スミマセン><
 
この本はですねー、七河さんファンのための本だと思いますよ。それもかなり熱の入った人向けの…。
前作に登場してた人物がこの本で再登場してるんですが、すんなり分かる名前で出てくれないんですよー。
だから最初誰のこと指してるかがわからない。
じっくり読んでいけば、もしくは最後まで読めばある程度分かるようにはなってるんですけどね。
そういう謎解きを仕掛けてるせいか、「あの人」とか、イニシャルとか伏字っぽい名前が多くて、
七河作品初読みの人にも読みにくいんじゃないかなーって思いました。
友人が、前作二作を読まずにこの本を読んで「いまいちだった」と言ってたんですが、
それも分かるかも~と思います(^_^;)
ただ、仕掛けられた伏線はすごいです。きれいに読み解けた時の達成感は半端ないと思います。
 
 

完全ネタばれの感想を個別に少しずつ…。(未読の方は読まれませんよう…)
 
 
 
「冷たいホットライン」
登場人物がフルネームで出てくるのにもかかわらず、
前作にどう繋がってるんだろうと必死に考えてしまった…(^^ゞ
前作とは直接は繋がらないお話でしたね。
しかし後の話に色々繋がるお話でした。ラストにつながる手旗信号の伏線とかね。
 
「アイランド」
すごいお話ですよね。
無人島ってどこのことだろうって、読みながら、怪しいなぁと思ってましたが、真相までは見抜けませんでした。
しかし、これは可能なことなのか??
右目を母親に殴られたという記述で茜のことかな、って気づいたんですが、弟なんていたっけ?と混乱…(笑)
 
「It's only love」
冒頭を読んで、名前とメガネで、すぐに誰の結婚式かわかったんですが、
…カナちゃん、玉の輿になっちゃったんですね…。
前作で明君たちの犠牲的協力を得て付き合ってた彼とは別れちゃったのかな?と、ちょっと気になりつつ、
「あたし」って誰??って思いながら必死に読んでました。
結局、最後の章になるまで気づけませんでした~><
キラくんについては、カナちゃん絡みですぐにわかったんですよ。
「美少年」の記述はチェック入れてますから(笑)
キラくんの彼女の正体もすぐに分かったけど、ラストの告白はびっくりしたなぁ。
だから「あたし」って誰よ!と、この話を読み終えてももやもやしてました…(^^ゞ
 
「悲しみの子」
これもすごい話ですよね…(^^ゞ
お父さんとお母さんが離婚の危機で子どもはどうなる?って話ですけど、
トリックとして成立するのかぎりぎりのところって感じ!?(笑)
彼女の秘密についてはなんとなくわかったんですけどね。
でも最後の、家のオチまでは見抜けませんでしたよ、さすがに。
最後の話を読むと、このトリちゃんがあの人だってわかります。
 
「さよならシンデレラ」「桜前線
こちらは、カイエとリコのお話。この二人は誰!?とそればっかり気になって、話に集中できなかった私…。
桜前線」では、「カイエの後輩」という形で、あの人が出ています。
最後の話でカイエが河合さんと言うことがわかりますが、
前の作品でもそんなに印象に残ってないんですよね…。
「七つの海~」の冒頭で少し紹介されてるけど、お話にはそんなに絡んでこなかったですよね??
だから、この本で重要なカイエの、その正体にはびっくりさせられました。
 
「晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)」
雑談のような感じで、家系図から色々読み解いているだけの話だけど、
やがて最初のお話に繋がる線が見えてきてびっくりさせられる、という話。
そして警部さんと話してる女性があの人だというのは、ネットのネタばれサイトを見て知りました。
なるほど、尚子と直を聞き間違えたわけね…。
 
「発音されない文字」
これは、ちょっと衝撃作品でしたよ。
前作「アルバトロス~」で不穏な空気を醸し出していたカフェが、こういう風に繋がるなんて!!
確かにあの女主人は怪しかったけど、その正体に驚かされました。
そして、前作のカフェの描写で、妙に克明に羅列されていた作品たちの意味が、ここにきて分かるなんて。
でもこの話、単独で読んで楽しめるのかな?訳わからなそうなんだけど…。
 
「空耳の森」
今までの話が繋がっていく、七河さんらしいラストの話。
この本の、これまでの話で傷ついた過去を持った人たちの、幸せな今が描かれていてほっとさせられます。
そして前作ラストで最も気になっていた人の復活が手旗信号などによって示唆されていますね。
ネットで詳しいサイトを見ると、時系列では、「It's only love」が一番新しいお話になるそうで、
カナちゃんに祝電を送ったのがあの人だろうということです。
次回作でまた元気な姿を見れることを楽しみにしたいと思います。
 

過去の七河作品では、悪いと思ってた出来事が、真逆に反転する鮮やかさが好きだったので、
そういう爽快感はこの作品では薄いかな。養護施設にまつわる、沁み込むようなお話もあまりなくて残念。
最後まで読んでもあまりすっきりしない、暗い雰囲気のお話が多いですよね…。
読み終えてちょっともやもやしてしまいました。
色んな立場で活躍する「あの人」を見れるのは嬉しかったけど。

七海学園のスピンオフとして読むには楽しめるけど、
シリーズ作品を全く未読の方には、ちょっと不親切な本ではないだろうかと懸念しちゃいました(^_^;)
前作を読まれた方でも、ちょっと混乱してしまうほどの凝った作りなので、
過去作品を引っ張り出して、何度も読み返さないとなかなか読み尽くせません。
だから図書館組には向かない作家さんなのかもしれません(^_^;)
読み込めば読み込むほどにすごさがわかる、そんな作品です。
 
読み込みの浅い図書館組の私ですが(^_^;)、この先もずっと追いかけていきたいなーと思います(^^)