駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『私を知らないで』 白河三兎

すごくよかったです!!冒頭からぐっと惹かれまして、一気に読んじゃいました。
すっごくおススメしたいけど、内容には触れたくない><
だって、これから読む人に、この先の読めない展開を、存分に楽しんでいただきたいですもん~。
でも内容に触れずに、この作品の良さを伝えるという難しさと言ったら…。
ああ、自分の伝達力のなさを嘆きたくなります(T_T)
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。「僕」はキヨコの存在が気になり、あとを尾行するが…。少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在。そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは―。メフィスト賞受賞の著者による書き下ろし。心に刺さる、青春の物語。
 
文章がもろ好みなんです。
最初の序章の兎の話を読んだだけで「うわ、好み」と確信しましたもん。
学生生活を、冷静な視点でひりひりと描く様がたまりません。
今流行りの(?)教室内カーストってやつの描写が生々しいんですよね。
冷静な主人公が思考を駆使して、当たり障りのないように、クラスメイトになじんでいく過程というのは、
よくある展開ですけど、それでもこの作品は、その主人公の徹底ぶりが「一味違うぞ」って感じで、
コミュニケーションのデリケートさの緻密な描写は読んでてすごく引き込まれました。
ちょっとした一文一文がすごくドキッとさせられるんです。テンポもいい。
このセンスは大好きだ、と思いました。
 
そしてその展開、キヨコという、美少女だけどクラスでは最低ランクの彼女が出てきて、
さらに転校生のお調子者の高野が加わって、彼らと主人公がどう絡んでいくのか、
この先どうなっていくのか、全く読めないんですよね。
先の見えない話なのに、引き込まれる文章にどんどん読み進めていって、
少しずつ見えてくる彼らの、そして彼らを取り巻く人たちの、また違う一面が見えてきてハッとさせられるんです。
そして最後、少しずつばらまかれていた、話とは無関係と思われたパーツが
見事にぴたりぴたりとはまっていく様は快感で、予想しない結末へと繋がっていきます。
その結末が、またちょっとひりひりしてるのがいいんです。
きれいな大団円そうで、実はそうじゃないんですよ。
そして後ろ暗い雰囲気の序章と繋がる終章が、最初の予想とまるで違う繋がり方をしているんですよね。
ラストは、「こうくるのかー」と、ちょっとなんとも言えない感覚になりました。
(未読の方には何言ってるか全然わかんない説明ですよね…><未熟ですみません~)
 
キヨコが何かにつけて主人公の黒田に「だから嫌い」と言います。
愛の反対は憎しみじゃなくて無関心だ、って言いますけど、だったら「嫌い」というのは、
すごく関心がある、意識してるってことなんだな、とこれを読みながら思いました。
どうでもいい人がやってもなんともないことを、彼氏にされたらすごくムカつくような、
親が、他の子の悪ふざけに寛容でも、我が子のは見逃せずに腹を立てるような。
「嫌い」って感情はマイナスのイメージだったけど、もっと違う意味もあるんだな。
嫌いという感情は、相手に対する期待や欲求の反動でもあるんでしょうね。
 
そんな、一見素直じゃないように装って、
実はどこまでも純粋でストレートな思いで繋がる彼らの、青春ストーリー。
この作家さん初読みでしたけど、これから要チェックです。
おススメです!