駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『総統の子ら』 皆川博子

やっと読み終えました…(^_^;)
600P超え二段組み。文章は読みやすいのだけど、私に歴史知識が乏しいのと、戦争用語に疎いのとで、
読み進めるのに、えらく時間がかかってしまった…><
長かったぁ~。でも読んで良かったです、本当に。
 
<内容紹介>(amazonサイトより)
将来の国力充足を目的としてナチスが設立した〈レーベンスボルン〉を舞台に、総統公認の青少年団〈ヒトラ
ー・ユーゲント〉の団員だった少年たちの心の軌跡をたどる、壮大な時代と人間のドラマ。

戦争の罪深さを更に思い知った一冊でもありました。
時代の流れを作ったり、歴史という体裁で作り上げるのは多分、一部の人間。
その他大勢は、そのうねりに呑まれて巻き込まれてゆくのでしょう。
そこには一人一人の思いがあり、信念があり、正義がある。
それに対して、正しいとか間違っているとか、軽々しく言えないということをひしひしと感じました。
ナチスという言葉にいい印象はないですけど、
だからといって何も知らずに簡単に「悪」だと言いきるのは間違いだと気づかされました。
彼らが非道な行いをしたことに変わりはないけれど、「悪」はナチスだけなのか?ナチスは全て悪なのか?
 
祖国ドイツのためにと、身も心も捧げる若き青少年たち。
最初はきらきらした目で入隊してくるのだけど、ほんの数年で凄まじい経験を重ねるのです。
その変わりゆく様が、痛々しく胸に響いてきます。
わずか20代でもう、死を待つだけの身だから「晩年」だというエルヴィン。
それは大仰でもなんでもなく、晩年とも言えるほどの苛酷な経験を積み上げてきてるのは、
読んでて納得なんです…。
彼らは本当に必死でただただ一所懸命で…だけど報われない結末を知っているだけに、読み進めるのが辛い。
(今の大河の「八重の桜」もそうだよなぁ…)
特に中盤に描かれる戦争の凄惨さと言ったら…。
これでもかこれでもかと、執拗に、詳細に描かれる、カールの前線での戦い、ヘルマンの捕虜生活等々…。
何のためにこんな思いを彼らはしているのか。
敵方も含めて、戦争に関わる人々は、何のためにこんな苦しい思いをしなくてはならないのだろうか!
ずっと、ぐるぐる、ぐるぐる考えさせられました。
 
ヘルマンが「神の存在」を信じるところの描写は、本当に胸を締め付けられました。
信仰心とは違う。
許しも裁きもしない、ただ在るという神を感じ、そして、その先に絶望を知る。
その場面はもう圧倒されました。
ヘルマンが「神」だと感じたものは一体何だったのでしょう。
人の心に残る「希望」だったのでしょうか?
ちゃんと理解できなかったんですが、でもすごく印象深い場面でした。
 
戦争という狂気の中でも、思った以上に彼らはまっとうなんですよ。
なんか不思議な感じでした。
日本の特攻とかもそうですけど、狂気のような結果になることはあっても、
そのぎりぎりまで彼らは今の私たちと変わらない感覚でいるんですよね。
その一線を超えるか否かは、ほんのわずかな差なんだと思いました。
すごく怖いことだと思います。
 
ああ、もっとたくさん学ばなくちゃいけないなー><
授業で世界史学んだけど、何にも頭に入ってなかったというのが今回よくわかりました(T_T)
当時のロシア(ソビエトというべきか)のことももっと知りたい…。
ボリシェヴィキ赤軍などこの作品では恐怖の存在でしたけど、それもまた側面の一つなのかもしれません。
「歴史知らない」とか言ってられないですね。
無知は罪。本によって知らない世界を知るたびに、そう思います。
しかしこれだけ無知だと、発言権すらない気がしてきます~(^_^;)
普段新聞見て、あれこれ勝手に言ってるけど、日本の歴史すらまともに知らないクセに、
何言ってるんだ、って感じですよね…(-_-)
 
戦争描写は本当に辛かったけど、登場人物はさすがみなさん魅力的でした~。
皆川さん必須要素の(?)「耽美」もちらちらありますしね^m^
時間はかかったけど、大変興味深く読みました!
 
余談。イタリアの描写に笑った。ほんとに「ヘタリア」だった。