駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『世界地図の下書き』 朝井リョウ

朝井さんの本。
相変わらず、作品ごとにいろいろ試される方だなーと感心。
今回は、子供たちが主役のお話。
いつもの過剰すぎる比喩は鳴りを潜めて、朝井さんらしさをぐっと抑え込んだ感じの文章で、
誰にでも読みやすい作品になってます。
(ただ時系列が分かりにくい部分がところどころあります…(^_^;))
でもいつもの朝井さんの、チリチリくる繊細な描写が好きな私としては物足りなかったかな。
過去作品の中では、「星やどりの声」に近い感じ。家族の感動ものとか好きな人は、気に入るかも(^^)
今回舞台になる児童養護施設については、全く縁がなく無知な私ですが、
ただ同じ舞台だと七河迦南さんのシリーズの方がリアリティを感じます。
この作品では、児童養護施設という舞台が、生かし切れてなかった気がしてちょっと不満かな…。
 
<内容紹介>
「青葉おひさまの家」で暮らす子どもたち。
夏祭り、運動会、クリスマス。そして迎える、大切な人との別れ。
さよならの日に向けて、4人の小学生が計画した「作戦」とは……?
著者渾身の最新長編小説。
直木賞受賞後第一作!

私が読んだある新聞記事で、朝井さんは、「何者」のようなちょっと毒がある話は、
結構誰でも書けるので、意外と難しい、納得できるハッピーエンドの話を書いてみたい、
というようなことをおっしゃっていました。(すみません、うろ覚えです…)
わざとらしくない、作りものめいていないハッピーエンドを、この作品でも目指したんだろうな、と思います。
だから周りの人たちや、状況は劇的に変わったりしません。
だけど、懸命に道を探せば、自分たちの中に変化は起こせる。
八方ふさがりに思えても、道は必ずある、と伝えてくれます。
ラストの場面で、佐緒里がみんなに伝える言葉は、じんときます。
これを伝えるために、朝井さんはこれを書いたんだな、と思えました。
 
朝井さんが、自分のジャンルはこれ、というのを決めないで、色々書かれてる姿勢はすごいなーと思います。
まだ若くて、いっぱい伸びしろのある作家さんなので、次に何が出てくるか、とても楽しみでもあります。
だから朝井さんがどんな作品を書いても、全部読んでいくつもりですけど、
期待したいのは、やっぱ朝井さんらしくヒリヒリチリチリ来るやつ!
朝井さんが直に肌で感じる風景を読みたいです~。
ですので、ぜひ次は社会人を主人公で!!