駄文徒然日記

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『大塚ひかりの義経物語』 大塚ひかり

昔から源氏にあまりいい印象がなく、義経にも特に興味がありませんでした。
大河「義経」も挫折しちゃったくらいで…(^^ゞ(タッキーは好きだったんだけどなぁ)
 
そんな私が大河「平清盛」で、義朝様のかっこよさにくらくらして、
荒々しい源氏にも少々興味がわいてきたところに、この本と出会いました~。
この本は室町時代に成立した言われる『義経記』を、大塚ひかりさんによって大胆に超訳された本です。
大塚さんの現代感覚の解説をふんだんに交えながら、
当時の基礎知識がない初心者でもわかるように丁寧に書かれています。
さらに「義経記」は、「平家物語」の補完的役割も担っているようで、
義経大活躍の源平合戦の記述がほとんど書かれてないそうですが、
その部分はちゃんと「平家物語」から抜き出して、義経様のことを網羅してくれるという親切設計。
吾妻鏡」などの史料の記述も添えつつ、あますとこなく、義経様について語られているわけです(^^)
 
さてこの「義経様」表記。この本で全編にわたってそう書かれてるんですよー。
大塚さんの愛ゆえのようですが、ここで描かれる義経様の無茶ぶりの数々を見ると、
なんかもう揶揄にしか見えてこない…(^^ゞ
大塚さん、本気で義経様を敬愛してらっしゃいますー?
でもまあ、そんな自分勝手で、気分屋の気まぐれさんでも、
「あー、もうあなた様なら仕方ないです」と思わせる何かがあるようなんですよねー。(私だけだろうか)
だからどんなありえねー言動でさえ、「義経様」のなさることですからーと思えてきます(笑)
 
室町時代に成立した「義経記」は、義経没後約200年たっており、
史料というより、創作部分の多い「ヒーロー伝説」に書き換えられているようです。
にもかかわらず、「え?それってかっこいいの!?」と思える俺様行為の数々!(笑)
船で逃げなければならない時に、愛人を何人も同行させたり、
人の忠告にまるで耳を貸さず、ものすごい言い分で独断専行してみたり、
そんな自分勝手な言動にびっくりしたりしてると、
「皆涙で袖を濡らし」なんて言って、「あれ?今の感動の場面だったの!?」などと戸惑うことしばしば。
剛の者のはずの義経様もしょっちゅう涙しまくってるし…(^_^;)
あとひたすら女性にやさしいんですよねー(笑)
室町当時のヒーロー像としてはこれでOKだったのだろう、と無理やり納得してみる…。
 
これに出てくる弁慶が非常にいい。
最後の仁王立ちとか印象深いから、なんか勝手に忠義に厚いイメージを持ってたんですが、なんのなんの。
義経様に言いたい放題言ったりして、全然敬ってる感じがしない。
変に対抗意識燃やしたり、皮肉ってみたり、からかってみたり、それでいて義経様の無茶を受け入れてくれたり。
主従関係というより、何でも言いたい放題の同士に近い感じで、二人のやり取りを微笑ましく見ておりました。
彼ってインテリで、いろんな策を練ってくれたりするんですけど、
これがえらく強引だったり、笑いを誘うような失敗したり、
相手をだますためといって義経様を虐待なされたり、なんかもう自由(笑)
でもそんな弁慶を頼みにしてる風な義経様もかわいらしいんですよね。
ほんといいコンビだ(笑)
 
義経様を慕う、静や忠信の記述もとても印象深かったですね。
でも戦国時代に比べると、自由度高い気がします。
忠義に囚われるんじゃなく、自発的なフリー感漂う忠心といいますか。
カリスマでみんなの上に立つというより、みんなが望んで立たせたリーダーって感じがしますね。
だから義経様がどこか坊ちゃん坊ちゃんしてるのかなぁ?(笑)
 
冒頭で申しましたように、私、義経にはいい印象がなかったんですが、
この本読んで、想像以上にむちゃくちゃやってる義経様に、とても愛着を覚えました(笑)
私がひねくれてるのか、それも義経様のカリスマゆえなのかわかりませんけども。
 
義経記」を読みたいけど原文は無理、という方には、とてもお勧めの本。
だけどかっこいい義経様を見たいとか、
小説のようなドラマティックな展開を期待してる人にはお勧めしにくいかな。
(読みやすく書かれてるとはいえ、古典の訳文のような流れは、少々違和感ありますもんね)
でも義経に派生するいろんな創作物の原点ともなるものですからね。
ファンにはたまらない本です。
私はとても面白く読みました(^^)