駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『こんなわたしで、ごめんなさい』 平安寿子

初読み作家さんです。友人から勧められ読んだ本。
 
ちょっとそっけないくらいの簡潔な文章。だけど、どきっとするところに切り込んできます。
実は、文章がさっぱりしすぎてて、あまり私の好みではないんですが、
でもとても読みやすくて一気に読んじゃいました。
(私の印象では、文章の系統が桂望実さんに似てる気がします)
女性の主人公で、いかにも女性向けネタが並ぶんだけど、全然ネチネチじめじめしてないんですよね。
だから共感するというには、冷静すぎる視点が少し客観的でしたが、
そんな視点で語られる鋭い指摘には、さくっとやられてしまいました。
 
<内容紹介>(出版社HPより)
「いませんか? あなたのまわりに、こんな人」
たとえば、こんな↓
――女性管理職・学者の妻・15歳の娘の母親、の三役をこなし、前向きで明朗快活なわたしは皆が羨む存在!
……だったはずの菅野早弓(44歳)は、最近職場で孤独を感じ、暗い毎日を送っている。なぜなら……
(episode 7「こんなわたしで、ごめんなさい」より)
「こんな人」ほかにも、まだまだいるんです↓
婚活を放棄したOL、対人恐怖症の美人、男性不信の<巨乳>女、フリフリ・ファッションおばさんetc.etc……。
欠点や弱点、悪い癖を自分から引きはがせずに、あがく女たちの悲喜こもごもを、クスクス、ほろりと描きだす。
「婚活の外へ」「どうか小さな幸せを」「イガイガにチョコがけするのも年の功」「自然の法則に従って」
「じれったい美女」「カワイイ・イズ・グレート! 」「こんなわたしで、ごめんなさい」の全7編を収録。
ユーモラスでシニカルな「平節」炸裂の傑作コメディ短編集!
「そんなあなたを許します」
と誰かが言ってくれるまで、先は長いぞ、頑張ろう。
 
 
7編からなる短編集。
少しずつ感想を。
 
「婚活の外へ」
周りに合わせて婚活をやってみたけど、私って本当に結婚したいの?と改めて見つめなおす。
20代は恋愛モードのはずなのに、冷静に結婚のために計算高くならざるをえない、
というような描写が胸に痛い。
 
「どうか小さな幸せを」
巨乳女子の大いなる悩みをこれでもか、と切々に語ってくれます。
いやー、なんか悩みがすっごいリアルでした。
そっか、巨乳さんは想像以上に、いたる場面で悩みがあるんだねー…。
 
「イガイガにチョコがけするのも年の功」
かわいげのない物言いしかできなくて、それを指摘されればされるほど頑なになっちゃったりしてね。
正論というイガイガな言葉にもチョコかけしちゃえば、もっと生きやすくなるんじゃないの?ってお話。
この話は知り合いとダブって見えてとても印象的でした。
 
「自然の法則にしたがって」
結婚願望に囚われてる女と、結婚願望ゼロのモテ女のお話。
ちょっと変で「ありうるのかな?」ってお話ですが、なんとなく頷ける部分もあるんですよね。
この話は極端な設定だったけど、恋愛がうまくいくいかないのライン引きって、こういうとこにあるのかな?
 
「じれったい美女」
美人のせいでネガティブになっちゃた女性と、ブスだと開き直ってポジティブに生きる女性の友情物語。
二人の、外見と中身のギャップがそれぞれ面白い。なんかほっこりしちゃうお話でした。
 
「カワイイ・イズ・グレート!」
いい年したおばさんが恥ずかしげもなくフリルひらひらの服を着ている。
「だって好きなんだもん」と主張されれば、周りはどうしようもない。
最初は「痛いなー」って思いながら読むんだけど、段々「これはこれでありか」と思えてくる。
これは巧いなと思った。
 
「こんなわたしで、ごめんなさい」
このセリフ、ごめんなさいって言葉は一見謝罪のようだけど、実は開き直り。
ダメな私も認めちゃう、さらけ出しちゃうってことですよね。
コンプレックスのない人なんて多分いなくて、「こんなわたし」を受け入れられたら、もっと楽になれるんだろうな。

 
「私ってこういう人」とか、「あの人ってこうだから」とか、勝手にレッテル貼っちゃって、
なんか身動きとりづらくなってる人たちのお話。
結婚って、仕事って、恋愛って、と女性ならだれでも持ちうる悩みを描きます。
極端な設定が多いから、お話としてはリアリティには欠けるけど、
その言葉の中にはリアルが詰まってるんですよね。
 
なかなか面白く読みました。