駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『はじめは駄馬のごとく ─ナンバー2の人間学─』 永井路子

「光秀の定理」を読んだ時に、この本を思い出したので引っ張りだしてみました。
もう30年近く前に書かれた本になるんですね…(^_^;)
「ナンバー2たるもの」というビジネス書的側面もあるせいか、当時の政治と絡めて書かれたりする部分など、
時代が違うためわかりにくいとこもありますが(私だけ?)、今読んでも面白かったですよー。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
歴史をながめてみると、トップの陰で、決して目立たないが充分な実力を持つ、したたかな仕事師がいたことに気づく。北条義時徳川秀忠がそれである。一方で、その陰の役割に徹し切れず、身を滅ぼした源義経明智光秀の類の連中もいる。No2の生きがいとは。巻末に城山三郎氏との対談「いま、ナンバー2がなぜもてる」を収録。
 
ナンバー2として挙げられるのは以下の六人の方々。
 
北条義時─はじめは駄馬のごとく
源義経─スタンドプレーが怪我のもと
徳川秀忠─花咲くモグラ戦術
平時忠─平家政権の仕掛人
明智光秀─途中入社の栄光と挫折
藤原不比等─大忠臣の完全犯罪
 
副題を見たら、なんとなく永井さんの評価が伝わりますね(笑)
 
私が歴史に興味を持ったのは、中学生の時、日本の古代史からです。
この本を買ったのも、藤原不比等の名前があったから。
つまり古代史以外はちんぷんかんぷんで、
当時、不比等以外で何やったかわかる人は、義経と光秀くらいでした。
(だからそれ以外の人は、読んだけどあまり記憶にない…(^_^;))
私の光秀のイメージはここで植えつけられたのですが、
今回読み返してみて、義経のイメージもここで作られてたんだと気づきました。
だって永井さん、ぼろくそに書かれてるんですもの~(笑)
だから私の中で義経のイメージがずっと悪かったのか…(納得)
 
歴史好きなくせに知識不足の私ですが、それぞれに軽ーく感想を…。
 
北条義時
この時代はあまり詳しくないのですが、今私がハマってる源平時代と、
ちょうど見てる大河ドラマ太平記」の狭間の時代になりますので、なるほどーと思いながら読みました。
実朝暗殺事件あたりは面白そうなので、小説なんかで読んでみたいな。
(葉室さんの「実朝の首」あたりはどうだろう…)
「名もなく、清く、したたかに」ナンバー2という立場に徹した義時、
尼将軍政子の陰でほくそ笑んでいたんでしょうかね?
永井さんはナンバー2として、義時絶賛です。
 
源義経
ああ、もうひたすらぼろくそ…(笑)永井さんはよっぽど義経がお嫌いなんだろうなぁ…。
まあ、まわりが悲劇のヒーロー扱いするから、余計に反発心あらわに書かれたのだと思いますが。
実際彼は軽率で、やりすぎで、政治的状況が読めませんでしたからね(^_^;)
ただ、過去の古い体制が崩れようとするさなかで、
新しい考えや時代の流れに上手に乗るというのも難しいことですからね~。
義経ばっかりが考えなしのように言われるのはちょっと気の毒にも思えます…(^^ゞ
 
徳川秀忠
秀忠の知識はあまりなく、家康と家光の間の地味な人という印象でしたが、永井さんの評価は全然違いました。
彼こそが幕藩体制固めという大仕事を行ったというのです。
密かに家康ばりに改易も行っているそうですし、
キリシタン大量処刑や外国貿易の制限など、鎖国へ繋がる路線も彼の時から始まってるそう。
実はかなり厳しいことを徹底的にやっているようで、なかなかのしたたかぶりを見せてくれます。
大河「江」での向井君はどんな風だったんだろう、と今更ながら気になってしまいました。
(一話で挫折しちゃったので…(^_^;))
 
平時忠
「平家にあらずんば」で有名な彼(笑)。曲者ですよねー。
いろんな人を盾にして、結構やりたい放題の印象。
何気に平家滅亡の後も生き残ってるし、義経に自分の娘を娶らせたりしてんですもんね。
立ち回りの見事さといい、嗅覚の異常に鋭い人だったんでしょうね。
永井さんは、ナンバー2を狙う時忠の最大のライバルとして重盛を挙げています。
「鹿ケ谷事件」では時忠VS重盛の水面下の戦いが繰り広げられていたのでは、とのこと。
だとすると、重盛らしからぬ「殿下乗合事件」も時忠が絡んだのでは?などと
重盛びいきの私は思ってしまったり…。(大河では絡んでましたよね!)
大河と言えば、森田剛くん演じた時忠は、曲者ぶりがよくハマってたと思います。
しかし森田君、大河『毛利元就』の松寿丸からずいぶん路線変更したなぁ…としみじみ…。
(松寿丸と杉のやりとり大好きでした!)
 
明智光秀
光秀さんについては「光秀の定理」の時に語ったので今回は控えます(笑)
永井さんも光秀という人物は評価していました。
ただ本能寺の変においては、ナンバー2にありがちな失敗で、トップの動向ばかり気にしていて、
ナンバー3以下への配慮が足りなかった、としています。
「優秀なナンバー2の下には打算的な子分が集まりやすい」ということで、
いざって時にうまく立ち回れなかったんでしょうね。細川とか裏切っちゃうしね…。
優秀すぎるゆえ、思わぬ落とし穴にひっかかってしまったようなイメージがありますね。
 
藤原不比等
持統天皇のよき忠臣と思いきや、永井さんは「天武・持統の路線を徹底的に打ちのめした」と言われます。
なるほどなるほど。
書き挙げられたのを見れば、中大兄&父・鎌足の路線を潰してきた天武・持統体制が、
不比等時代に片っ端からひっくり返されているんですねー。
まあ、彼が実は鎌足の子ではないという説もあるようですし、
永井さんの言われるような、そんな壮大で緻密な計画が不比等にあったかどうかは置いておいて、
はりめぐらされた人脈は徹底していて、彼の恐ろしいまでの強かさを思い知ります。
思うままに手腕をふるうためには、下手に矢面に立つようなトップは狙わずに、
トップの陰にいてこそ実力発揮できるのかなと思いますね。
 
「ナンバー2」と言っても、明確にナンバー2の人がいるわけではないので、
ここで挙げられている人は、トップに比べると知名度が低い、陰の実力者らというべきかな。
義経はいろんな意味でここでは浮いた存在な気がする…(^_^;)なぜ永井さんはここに並べたんだろう…)
 
永井さんの文章は明快で読みやすくていいなぁ。
かなり辛口な部分もあるけど(特に義経と当時の政治家・笑)気軽に楽しく読める本です。
もう絶版みたいですが、興味持たれた方は、図書館とか古本とか探してみてくださいね。
巻末にある、城山三郎さんとナンバー2について語りあう対談も、二人言いたい放題で面白いです(^^)