『九郎判官』 領家髙子
はーい、現在どハマり中の源平ものです。
年末年始は源平まみれの予定です(笑)
(これ以外にも平家物語のマンガを読んでいました(^^ゞ)
初読み作家さんの作品でしたけど、よかったですよー、これ。
掘り出し物を見つけた気分でした。
図書館で借りた本だけど、手元に置いておきたいので買っちゃうだろうな。
ただ読み手を選ぶ本ですね。
「九郎判官」が源義経のことだとわかるくらいに、ある程度の源平知識がないと読むのが難しいかもしれません。
短編集ゆえ、断片的な描写で、時代背景についてはあまり詳しく説明されません。
ある程度の人物関係や時代背景がわかっていないと分かりにくいかな、と思います。
まだ齧った程度の私だと理解しきれない部分もありました…。
しかし「九郎判官」というタイトルで義経に惹かれて読むと、これまた物足りなさを味わうことになります。
なんといっても、義経本人は全く出てきませんから。
義経にかかわる人たちを語り手として、主に彼ら自身の人生について、
そして義経が断片的に語られるという体裁になっています。
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
義経をめぐる清冽な人想いの雅歌!幻の人の香、匂やかな男の悲劇を描く大型新人の透明な文体。秀作5篇。
短編集なので、それぞれのお話について少しずつ…。
「吉野の弁慶」
それを基にしており、熊野の神性が絡んでくる不思議っぽい話。でも弁慶が黒いんですよ…ぞっとするほどに。
義経のために陰で尽くしすぎたゆえに切ない話。
「西行と頼朝」
源平話を読んでいて、義経はわけわからんし、頼朝は得体が知れないな、と思います。
そんな底が知れない頼朝を見る西行のお話。
「太夫黒」
「西行と頼朝」からつながる話。
頼朝と接見後、奥州へ向かった西行が、佐藤兄弟の父である基治と語り合います。
奥州と義経について深い考察がなされています。
「千本桜」
静の話です。吉野で頼朝に舞いを強要される静と、政子・大姫を絡めた話。
大姫大好きなんですよー。義高が忘れられないんですよねー(涙)
「静は呪いをかけたのです。鶴岡八幡宮で」と静の舞いを見た大姫が政子に告げます。その真意とは…。
げに恐るべきは源氏の血・・・ってことなのかな。
「耳裂け鹿」
(でも九郎が八男って説は義経記のみで言われてることだしな…)
不勉強でちょっとついていけなかった部分もありましたが、興味深く読みました。
とても雰囲気のある文章で、うっとりと浸りながらの読書でした。
史料というより物語性の強い「義経記」が元ネタになったりしているせいか、
この作品も歴史ものというよりは、幻想的な時代小説って感じがしました。
もともと私の中で掴みどころのない義経像が、この作品ではさらにおぼろげに描かれているのですが、
色んな人の深い思いがあって、本人すら知りえぬ彼にまつわる数々の駆け引きがあって、
そんな中で強烈に時代に名を残し、散っていった義経。
深い深い余韻が残ります。
源平に興味があって、さらにもう一歩踏み込みたい人向けの本です。