駄文徒然日記

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『リバーサイド・チルドレン』 梓崎優

梓崎さんのデビュー作『叫びと祈り』から三年。待望の二作目。

残念ながら私の中で前作は超えない。だけどやっぱり梓崎さんは好きだと思えた。
その土地ならではな、異常な動機は今作でも健在。
そこが一番梓崎さんらしさだと思うので、相変わらずなのがうれしい。
前作の短編集が本当にてんこ盛りで、あれよあれよと話と場所が飛ぶのに比べると、
今回は長編なので少し冗長にも感じられたのだが、じっくりこの世界に浸れたのはよかったと思う。
構成や文章の違いのせいか、前作よりずっと読みやすくなっている。
 
<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、現地のストリートチルドレンに拾われた。「迷惑はな、かけるものなんだよ」過酷な環境下でも、そこには仲間がいて、笑いがあり、信頼があった。しかし、あまりにもささやかな安息は、ある朝突然破られる―。彼らを襲う、動機不明の連続殺人。少年が苦難の果てに辿り着いた、胸を抉る真相とは?激賞を浴びた『叫びと祈り』から三年、俊英がカンボジアを舞台に贈る鎮魂と再生の書。
 
日本人の子供が、いきなりカンボジアストリートチルドレンに交じって生活するという経緯が
ちょっとリアリティに欠ける気もするが、作者の訴えたいことは多分これが一番適してたのだろうなと思う。
彼らと共に生活しながら、それでいて彼らを読者と同じ感覚で(つまり日本人という立場で)、
外から見る目が必要だったんだろう。
でないと、読者としての我々が彼らに入り込んでいきにくいだろうから。
最後の動機に、読者がちゃんとたどり着くために。
 
カンボジアを描く前半はそれだけで十分面白く、
わざわざミステリじゃなくてもいいのになー、と前半部分を読んでて思うのだけど、
ミステリの動機を見ると、やはり非常に独特で、梓崎さんはこういうスタイルがいいのかな、とも思ってしまう(^_^;)
ただ長編だったせいか、前半と後半がちょっとぎくしゃくしてるようにも感じられてしまった。
鮮烈な短編のイメージが印象強く残ってるからかな。
 
作中の人物である、ヴェニイの太陽っぷりが泣けるほどに素晴らしい。
心の中にひっかき傷を作られたように、彼のことがずっと残った。
空が泣いても、閉じられない傘があっても、背中のかゆみが忘れられなくても、
彼の太陽が輝くから、残された彼らが明日という日を繋いでいけるんだろう。
 
伝説で語られる泥人形のゴーレムと崩れ落ちる橋、そのリンクはとても効果的で唸らされる。
そしてひたすらに切なさが残る。
人間になれないゴーレムは、崩れ、土に還るのだ。
 
この作品に不満点がないわけではないけど、それでも梓崎さんの作品が読めて満足でした。
次回も梓崎さんにしか書けない作品をぜひ期待してます!