駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『書楼弔堂 破暁』 京極夏彦

ひゃーん、面白かったぁ。
っと…変な第一声ですみません。
だって、京極さん×幕末偉人のお話なんて読めるなんて思わなかったもの。
偉人のみならず、文豪さんらの名前もあちらこちら散りばめられてて、
マイブームにあまりにタイムリーなので、かなりミーハー気分で読んでしまったと思います(^_^;)
特に4章「贖罪」は素晴らしいっ><

京極作品はほんと久しぶりでした。
実は京極堂シリーズしか読んでなくて、しかもそれも「陰摩羅鬼の瑕」止まりという、
かなり中途半端な京極作品読者です…(^_^;)
はは、10年ぶりだよ…。
とまあ、10年ぶりのせいなのか何なのか、あまりの読みやすさに拍子抜けしそうでした。
いや、以前からあの分厚さを難なく読ませる筆力がおありでしたけど、
今回見慣れた二段組みではなかったからかどうなのか、
難解さがほとんどなく、やたら読みやすくてびっくりしました。
京極堂のような薀蓄がなかったからかなぁ。

時代が京極堂よりさらにさかのぼって明治が舞台。
幕末物は好きで、いくつか読んだり見たりしてきましたが、
その幕末後ってのが私にはすごく新鮮で面白かったです。
大政奉還の後の激動の時代が過ぎ去って、表面上何もかもが一新され、
それに流されてるような、あまりわかってないような、
自然になじんでるような、そんな当時の市井の方々の、混沌とした感じが実に面白かったです。
西南戦争がちょっと前の出来事っていうセリフだけで、なんか妙に感慨深く感じたりしました(笑)

まあ、そんな中、この本のキャラクターはいかにも京極作品らしくてうれしくなります。
不愛想な弔堂(変換したら「戸村移動」と出てきた…私のパソコン・笑)の店主、
無聊な日々を送る高遠君、きれいで不思議君なしほる君等々、なんか初めてだけどなじみ深い感じ(笑)

「本」というものが電子書籍化したりして激しく変わっていく昨今、
その本屋、出版社、という原点に触れていることも興味深いです。
どういう成り立ちで「本」というものが我々一般庶民の間に広まっていくことになったのか。
京極さんはそういう方面に、すごく敏感な方なんだろうな。
電子化にいち早く反応するし、最先端とその根底とを、
きちんと踏まえてるようでなんか頭が下がります。

「本」とはそのもののことで、内容だけとか、形だけとかではない、
というのを大いに語られていて、本当に頷くばかり。
「弔堂」の由来なんて、ほんとびっくりで、でも言われてみればそんな気も…と納得できちゃう不思議!
弔堂の主の言葉は、詭弁のようであり、道理のようでもあり、翻弄されるのですが、
それが京極作品らしくて面白かったです。

正体不明の迷い人の悩みに触れ、それを見事に解体して、その人への一冊を差し出す。
迷い人の正体が分かり、その物語の過程が史実にうまく絡められていて、
ラストまで読んでほーっと唸ってしまいます。
特に4章はよく知った人物だったので、内容がしみじみと胸を打ちました…><
本当に彼が中濱さんの護衛だったらいいなぁ。
(作中にもあるように、その護衛云々が事実かどうかはわかりませんが、証言自体は史実です)

これは続編も出るかな??高遠君はどうなるのかな??
まあ、なんにせよ、楽しみ楽しみ♪