駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『美雪晴れ─みをつくし料理帖─』 髙田郁

いつも心待ちにしているシリーズの9冊目です。
なんと次巻が最終巻になるんだそう…。
以前から終わりはほのめかしていたけれど、思ってたより早かったなぁ。
でも全10巻ということで、きりはいいですよね。
今回も安心の出来で、じっくり堪能しました。

最終巻に向けて、澪の周辺がきちんと収まるべきところに収まっていく感じですね。
最終的に澪自身はどこに収まっていくのか?それは次巻のお楽しみってとこですかね。
芳さんの縁談をきっかけに、澪の自立、そしてその後のつる家についてなどの問題が、
糸がほどけるように片付いていく様子に感心しました。うまいこと作るなー。
少々出来過ぎな話でも、あまりにつながりがきれいなので、あざとさが感じられなくていいですね。
髙田さんは、無理なく読ませるのが本当にうまいなぁ。


(以下、内容に触れた感想になります。未読の方ご注意ください<m(__)m>)




このお話では、澪やつる家の面々、その他の縁のある人々の、誰かが絶対的に正しいわけでなく、
誰もが道に迷い、時には間違った道を選ぼうとすることもあります。
だけど信頼し合う同士で、互いに道を正したり、引っ張ってあげたりして、
やがてそれぞれが本来の望むべき道を進んでいくんですよね。
その支え合う姿が本当に尊くて、胸に沁みます。
番付けに関わる種市、縁談に迷う芳、大事な時期に災難が降りかかってしまう美緒、
吉原で思い通りにいかない澪…一人では迷ったり立ちすくんでしまいそうな場面が誰しもあって、
それを互いに支え合い、前に歩んでいきます。
江戸と言えば人情ものですが、この作品では本当に、
その人間同士の関わり合いを優しく諭すように描いてくれているな、と思います。

「食は人の天なり」…なんかチャングムを思い出します…。
優れた料理人の究極って医学へと繋がっていくのかなぁ。
医食同源」と言いますものね。
ということは、ですよ。
御典医を父に持つ源斉先生、御膳奉行を務める小野寺数馬と関わりあってきたいうことで、
澪の最終到達点は…なんて想像しちゃうんですけどね。
まあ、あと一巻でそんな突拍子もないとこまではいかないでしょうけど。

今回描かれていたのは、澪の自分の手の届く範囲で、ということ。
使ったことのない金箔は無理して使わない。普段飲まないお酒に対しては知識が足りない。
そんなエピソードを重ねて、澪は等身大の料理人であり続けるのかな、と思いました。
これからの道を案じる澪に、源斉先生は、澪はすでに揺るがずに自分の道をちゃんと歩いている、
と伝えます。
その言葉を受けて、澪はつる家からのその先を見つけるんでしょうね。

しかし、澪のもとから小松原様が去り、あとは源斉先生ががっつり引き受けてくれるかと思ったら、
先生ずっと控えめなんだもんなぁ…(^_^;)
今回ちょっと見せ場がありましたけど、私から見れば、全然小松原様に及ばない…><
最後の短編だけで、小松原様に持っていかれたじゃありませんか!
(これ新聞で先に読んでたけど、やっぱいいですねー)
源斉先生のこのアピール力の弱さは、澪とくっつけて終わるような締めを髙田さんは考えてないのかな?
それともただ単に、小松原様に未練を引きずりまくってる私の目に、
源斉先生が霞んで見えるだけなんでしょうか?



というわけで、次巻が最終巻ということで、色々予想せずにおれませんでした(^_^;)
まあ、メインは小松原様でも源斉先生でもなく、野江ちゃんなんだと思いますが。
二人の運命やいかに。次巻は8月刊行予定だそうです。