駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 村上春樹

私にはめっずらしく、村上春樹を読みましたよ!遥か昔に読んだ「ノルウェイの森」以来です。
(そして村上春樹作品はこれしか読んでない)
ノルウェイの森」は、もどかしいようなちょっと理解しがたいような変な話で、共感とは程遠いけど、
文章は嫌いじゃなく、それなりに面白く読みました。
その時は、「ああ、村上春樹は相性悪くないかも」なんて思ったのですが、
結局それ以来彼の本には手を伸ばしそびれてました。
まあ、私が純文学系をあまり好まないせいもあったんでしょうね。
そんなこんなで、「1Q84」が話題になった時には見向きもしなかったんですが、
今回のは「読みやすい」と聞き、久しぶりに読んでみることにしました。
 
付け加えるなら、村上春樹作品は「ノルウェイの森」以来と言いましたが、
ちょっと前に「小澤征爾さんと、音楽について話をする」という村上春樹さんの対談集は読んだことがあります。
結局、返却日に追われていた状態だったので、100Pほど読んで返しちゃったのですが、
内容が恐ろしくマニアックだった割には面白く読めました。(私はクラシックに全然詳しくないので)
小澤さんの変わりものぶりも面白かったし、村上さんの謙虚で丁寧な人となりにも好感を持ちました。
自分の考えを、ものすごく丁寧に、なるべくわかりやすい言葉でじっくり積み重ねていくように話す姿が、
とても印象的でした。その時の好印象が今回、この作品を手に取った一因にもなるのかな。
 
結果、読んで悪くなかったです。
思ったより楽しめました!やっぱ相性は悪くないんだよなー。(でもハマりはしない…(^^ゞ)
読み始めて、予想外にミステリな流れに驚きました。で、それなりに謎が解けるのにもびっくり。
全部不明のままでもおかしくないと思って読んでましたので。
まあ、全ては明かされないんですけどね。ラストも中途半端なとこで終わってましたし。
終盤読みながら、そんな気はしたんですけどねー。
まあ文学作品ですから(でもその割にはエンタメ性が高かったな)。
 
もっと難解なのを想像してたので、あまりの読みやすさにびっくり。
ノルウェイの森」はもっとぐちゃぐちゃしてたよなー。
普段エンタメ系を読んでる人間としては、もやもやが残ったりもするわけですけど、
登場人物にがっつりはまり込むような作品ではないので
(あの彼らの体温のなさでは感情移入なんかはないかな)、
そんな詳細の不透明さもそんなに気になりませんでした。

世界的に有名な作家のすごさというものは、残念ながら私ごときにはわからなかったわけですが、
それでも読みやすい無理無駄のない文章は心地よかったです。
日本語らしい自然さがない、翻訳のような文章なんですが、
まるで他人事のようなその距離感が心地いいんですよねー。不思議だ。
 
非常に不思議なタイトルですが、読めばすぐに納得です。
主人公・多崎つくるの高校時代、周りにいた四人は色が入った名前であったため、
つくるは「色彩をもたない」扱いで、
36歳になった彼が過去の事件を振り返るために16年間離れていた友人たちに会って周る巡礼を行う、
というお話なわけです。
「色彩をもたない」ことを発端に、なんだか仲間に対してコンプレックスを抱いてるようなつくるくんが、
うじうじと自分を卑下して語るわけですが、
駅舎に執着して、結局駅を作る仕事に就く彼は、彼らのステーション的存在であったのだろうな。
自分には何もないように思えても、実は誰も持ってないものを持ってる。
駅として動かなかった彼が、巡礼として自らの周りを巡って、
外からの自分や新たな景色が見えてくるわけですね。
若かりし日の傷を大人になってほじくり返す…かなり手痛い作業ですが、
人生に踏みとどまってしまったときには必要なことなんだろうな。
そういう部分では、大島真寿美さんの「ピエタ」に通じるものがあるかな。
経験を積まないと、受け入れらない事実があるということなんですよね。
 
この作品は、私はほんと初心者レベルでしか読めなかったのですが、
熱心な読者の読み込みによれば、かなり奥深い作品であるようですね。
一見、本筋から離れるエピソードにもいろいろ含みがあるようです。
検証サイトなどで、シロについての謎、ラストの行方などとても説得力のある答えが提示されていて、
とても面白かったです。
この作品を読まれて、残された謎が気になった方は是非検索してみてくださいね。
 
そういった深い読み込みもできるし、私のような村上春樹初心者でも、
それなりに面白く読むことができる作品です。
でもま、村上春樹はまたしばらくいいかなー(笑)
 
(以下、検証サイトからの覚書です…)
・シロを妊娠させたのは、シロの父であり、彼女を殺したのも彼である。(つくるの父説も)
・沙羅は沙羅双樹(花が白い)から来ており、シロの姉ではないか?
・シロとクロでグレー。灰田はつくるが作り出した自分自身?