駄文徒然日記

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『上流階級 富久丸百貨店外商部』 高殿円

やっぱ高殿さんのお仕事ものは間違いないわ!
面白かったし、読んでよかったと思えました。
ほんと私には縁遠すぎる世界でしたけどね(^_^;)
百貨店の売り上げの約三割が上流階級相手の外商の売り上げで、
その外商一人のノルマが一か月1500万だなんて、
もうどんな世界なんだって思いましたよ。
買い物が桁違い。次元が違いすぎる…(>_<)
外商どころか、百貨店自体あまり行きませんし(行ってもデパ地下がいいとこ)、
ブランドもさっぱり…そんな私でも、桁の違う上流階級をチラ見して、
世の中にはこんな世界があるのか、と面白く読みました(^^)

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
バイトからのたたき上げである鮫島静緒は、百貨店の洋菓子部門でキャリアを積み重ねてきた30代半ばの苦労人だ。洋菓子以外にも手がけたフロアリニューアルが成功し、契約社員から晴れて正社員になったはいいが、突然の人事異動で男性ばかりの外商部に唯一の女性として配属される。実はカリスマ外商員・葉鳥の退職を控え、それまでに彼の顧客との太いパイプを繋げるべく、さまざまなメンバーが集められたのだった。これまで仕事では成功を収めてきた静緒だが、プライベートでは同僚・神野と別れたバツイチの身。勝手が違う外商の世界に戸惑いつつ、交渉成立を目指してお客様のところに足を運ぶが―。


外商という、一般人にはなじみの薄い世界を描き、知らない世界を覗ける楽しみがありつつも、
普通に働く人々にも十分通じるメッセージの数々。
働くこととは、生きていくこととは、というのを、高殿さんは毎度ながら丁寧に描いてくれます。
それでいて、マンガチックなキャラが織りなすストーリーは読みやすく、テンポ良く読めるんですよね。
そんなラノベチックな雰囲気ですが、結構深いとこついてくるので侮れません。

ネット社会になり、対面でなくても簡単に欲しいものが手に入る時代。
そんな中で、店が生き残るためには、どうすればいいのか。
「物を売る」ということは、ただ単に即物的なやりとりだけじゃなくて、
目には見えないあれこれが実は重要なんですよね。
それは互いの信頼関係だったり、その人の背景だったり、
そういう互いの過去や将来のやりとりも行われてるわけなんですよね。
長く付き合っていく中で育まれるものが外商とお客様の間にはあって、
それは互いの貴重な財産になっていくのです。
まあ、外商と縁がある方は一部でしょうけども、コミュニケーションがどんどん希薄になっていく社会で、
外商でなくとも実店舗や販売員の直接やりとりをしていく関係ってすごく貴重なものになってくるんじゃないかな。そういえば、コンビニも接客強化するとか言ってたし、これから重要視されてくるところなんでしょうね。
なじみのお店や店員さんなんてのをもっと作っていけるとステキだろうなぁ。
小心者で店員さんに話しかけられるだけでビビる私ですが、並べられてるモノばかり見るんじゃなくて、
いいお店や店員さんを意識して買い物してみようかな、と思えました。

元が連載だったせいか、同じ説明が何度も出てきてくどかったり、
構成がぎこちなくて読みにくい部分がありましたが、そういう細かい部分に目をつぶれば、
全体的には読みやすく面白い作品でした。
もうちょっと静緒の奮闘ぶりが見たいのと、人間関係の行方が気になるのでシリーズ化してほしいな。
トッカンシリーズが好きな方は、こちらも是非!