駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』 岡田尊司

私は育児ボランティアをしてるので、その手の関連本を時々読みます。
そういった本は普段ここであまり記事にすることはないのですが、
今回は予想外に文豪について言及していたので、興味を持たれる方もいるかもと思い、
簡単に記事にすることにしました。

文豪の中でも一番食いついたのはそう、去年からなにかしら縁深い『夏目漱石』先生です。
なんか漱石づいてるんですよねー、ここんとこ。
(しかし、新聞連載中の「三四郎」…挫折しそうですよ、先生(^_^;))
そんなだらしない読者ですけども、変わり者の漱石先生には興味津々なのです~。
他にも太宰治ヘミングウェイ川端康成、エンデなどなど、様々な著名人の例が挙がります。
それらの作品解釈の一面もあって、本来の目的とずれつつも、そう言う部分を面白く読みました。

<内容紹介>(出版社HP)
従来、愛着の問題は、子どもの問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子どもの問題として扱われることが多かった。しかし、近年は、一般の子どもにも当てはまるだけでなく、大人にも広くみられる問題だと考えられるようになっている。しかも、今日、社会問題となっているさまざまな困難や障害に関わっていることが明らかとなってきたのである。
さらに昨今、「発達障害」ということが盛んに言われ、それが子どもだけでなく、大人にも少なくないことが知られるようになっているが、この発達の問題の背景には、実は、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのである。実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも多い。


周りの人が普通にできることが苦手だったりして、「ちょっとここは人と違うな」て思うことって、
結構多くの人にあると思うんですよ。
もしくは仕事関係で、「なんでこの人は、こんなに接しにくいのかわからない」
と悩んでるひともいるんじゃないでしょうか。
この本によれば、3分の1の人はこの「愛着障害」を何らかの形で抱えているそうで、
人間関係に支障をきたしたりするようです。
愛着障害」というと、幼いころにネグレクトを受けたとか、虐待を受けたとかになるので、
自分は違うと思いがちですが、ここに挙げられる特徴を見ると、他人の要求を断れないとか、
潔癖すぎる完璧主義とか、「ああ、結構自分もそう」とか「あの人、こんな感じだわ」と思える部分が
たくさんあるんですよね。
私はこれまで親とは良好で、過去にこれといった問題はないつもりでしたが、
人に頼るのが苦手だったり、過去のことをあまり覚えてなかったり、
この「愛着障害」の特徴に当てはまることが結構ありました。 
両親は特に厳しいわけでもなく、たくさん愛情をかけてもらったんですが、
よく思い返すと、親は褒めるのが苦手で、あまり手放しで褒められることがありませんでした。
そういう部分が、「自分に自信がない」私を作ったのかなー。
最後のページで診断ができ、私は安定型でしたが、回避型がちょっと高めでした。
ちなみに、依存したり人とべったりした関係になりやすい場合を「不安型」、
人とつながったり、失敗したりするのを過度に恐れる場合を「回避型」、
どちらも強く、人に頼りたいけれど頼れない悩ましい状態を「恐れ・回避型」と呼ぶそうです。
この診断はネットでもできるので、興味を持たれた方は試してみてくださいね。
(「愛着スタイル診断」で検索すると出てきます)

主にこの本は、発達障害とか、パーソナリティ障害などに関心のある人が手に取る本かと思いますが、
特に問題のない人が読んでも共感を覚える内容になっていると思います。
ただ、どれもこれもすべて「愛着障害」に由来している、という向きがあるので、
こはちょっと首をかしげるところですが、それを差し引いても読む価値のある本だと思いますよ。

で、この本をここで紹介したのは、この「愛着障害」の例として文豪が何人も挙げられているからです。
夏目漱石も幼少の頃、養子に行ったり戻ってきたりと、複雑な愛情を受けており、
この「愛着障害」が顕著に表れている例として挙げられています。
それゆえに作品に現れる女性観など、「愛着障害」に由来する作品の読み解きは結構説得力があって、
興味深かったです。
川端康成の解釈なんかは、すごく信憑性があったなぁ。
だから「片腕」とか「眠れる美女」とかあんな不思議な作品を書かれるかなぁ、なんて思えました。
(この二つを読んで川端康成にハマった私…)
同じように太宰治も挙げられています。
人間失格」などで描かれている描写はまさに「愛着障害」からくるものだそうで、
私など「人間失格」の道化あたりの言い分はいまいち理解しきれなかったのですが、
これ読んでなるほどーと思えました。
とにかく文豪といわれる方たちなどは、ことごとく幼少時代に不安定な要素を抱えてることにびっくりでした。
今まで、名作で「理解できない感覚だ」と思ってた部分は、
そういう特異性からくるものなのかもしれない、と妙に納得できたのでした。
この本では、作品の記述を本人の言葉のように判断してたりするので、そこはちょっと気になりましたが、
真実であるかどうかはさておき、こういう切り口で文豪たちを解釈するのは非常に興味深くて、
一解釈として読むのはありだと思いました。

ここでは数多くの著名人が例として挙げられています。
上で挙げたほかにも、中原中也スティーブ・ジョブス、ヘッセ、オバマクリントン、釈迦などなど…。
愛着障害に限らず、障害を抱えるということは、いわゆる「普通」の枠を超えた感性を持つわけです。
それゆえ一般人が持たない発想が生まれます。
だから人と違うことをして名前をなすような人は障害を抱えてる場合が多いというのは、
なんか納得できるし、救いがある気がしますね。

ありゃ、簡単にと言いながら長くなりましたね(^_^;)
育児、心理学、コミュニケーションなどに興味のある方は是非!
もちろん、文豪の分析に興味のある方も読まれてみてくださいね~。