駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『土漠の花』 月村了衛

面白く読みましたー!と言ったら不謹慎になるのかな…?
実は、もっと重いテーマで、手ごわい作品だと思ってたんです。
題材がソマリアだし、こんなタイミングだし、読むの辛いかもなーとか。

それが良くも悪くも(!?)サクサク面白く読めてしまいました…(^_^;)
だってハリウッド映画みたいで、映像的、視覚的に盛り上げてくる作品だったんですもの…。
追っ手を振り切りながら全速力で車走らせて、落ちてくる岩をつっきってセーフ、みたいな場面の連続。
廃墟の町で敵と死闘を繰り広げるラストと言い、これは完全に映像向きな作品。
変な予備知識なしで、エンタメ作品だと割り切って素直に読めれば、もっと純粋に楽しめたかも。

<内容紹介>(出版社HPより)
男たちは、命を賭けて女を守った――。
なぜここまで激しく攻撃されるのか?
なぜ救援が来ないのか?
自衛官は人を殺せるのか?

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。最悪の状況のなか、ついには仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか? なぜ救援が来ないのか? 自衛官は人を殺せるのか? 最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。


先日の「ジョーカー・ゲーム」の映画で、頭脳戦のスパイものと思っていたら、
派手なアクションものでした、って感じ、再び。こんなにアクションメインな作品だと思ってなかったなぁ。
アフリカという豊富な資源に恵まれたゆえに、様々な国の思惑が入り乱れた、最悪の紛争の地が舞台ですから、
重厚な物語を想像してしまうわけです。
実際、他のSF作家さんの「虐殺器官」や「ジェノサイド」とか読んできて、いろいろ圧倒されたりしましたし。
そういう期待をもって読むと、ちょっと肩すかしな感じでした。
話はすごく読みやすいし、引き込まれるし、一気読みは間違いないんですけどね。
でも、一気に駆け抜けてしまって、「あれ?終わってしまった」という読後感でした。

そして月村さんの「機龍警察」を読んでる身としては、「月村さん、こんなもの!?」と思ってしまったのも事実。
なんだか戦闘シーンがメインで、全体的に浅く感じてしまったんですね。
「機龍警察自爆条項」でアイルランドを背景に、主要人物である元テロリスト・ライザを
あんなに深く描いてくれたのに、
それに比べるとこの作品の、スルタン(氏族長)の娘というアスキラの印象の薄さは何??
ライザに張れるくらいの過酷な背景を背負ってるはずなのに、
戦場の花的要素しか持たない彼女はちょっと残念でしたねー。

そんな感じで、作品自体は面白かったと思うんですが、期待外れな感も否めず…。
新聞広告とかの煽りも悪いんだろうなぁ。
次は寄り道しないで、ちゃんと「機龍警察」の続きを読みます!