駄文徒然日記

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『死神の浮力』 伊坂幸太郎

そう言えば、とこれを読みながら思い出しました。
伊坂さんの続編って、あまり続編っぽくなかったんだった。
「魔王」→「モダンタイムス」も、「グラスホッパー」→「マリアビートル」も前作と全く雰囲気を変えて、
違うベクトルで楽しませてくれる作品でした。
そして今回も。
「死神の精度」の続編にあたるわけですが、話の筋的には「マリアビートル」と被りました。
救いようのない悪が出てくるって点で。
本作の本城は「マリアビートル」の王子のキャラより印象弱いですけどね。
もしかしたら、伊坂さんの続編って、書きたいテーマがあって、
たまたま今まで使った設定を使ったら続編扱いになったって感じなんじゃないだろうか。
例えば、今回めっちゃ重いテーマ書きたいから、
千葉さん出したら読みやすくなるんじゃないか、って思ったとか(笑)

今回の長編ではかなり重い題材を扱っており、そこでは死神の千葉さんがいいクッションになってます。
キャラ的にはそんなに変わってないと思うんですが、前回はコミカルながらも飄々としてクールに見えた彼が、
今回はコミカルを通り越しておちゃめにすら見えました。なんといっても参勤交代経験者ですから(笑)
話が重いだけに、彼の存在がこの物語の浮力として作用していたのでは…?
それにどん底に沈んでいく山野辺夫妻は、千葉さんに精神面でも行動面でもかなり助けられていましたしね。
ということは、「死神の浮力」というタイトルは、「死神が浮力」ってことになりますね(笑)

<内容紹介>(出版社HPより)
娘を殺された。相手は二十五人に一人の、良心を持たない人間。
一年前、一人の少女が殺された。犯人として逮捕されたのは近所に住む二十七歳の男性、本城崇。彼は証拠不十分により一審で無罪判決を受けるが、被害者の両親・山野辺夫妻は本城が犯人だということを知っていた───。人生をかけて娘の仇を討つ決心をした山野辺夫妻の前に、死神の千葉が現れる。

多少冗長気味な部分もありましたが、面白く読みました。
最後は映画のクライマックスのようになってましたね(笑)その場面を想像するとかなりシュールだ…。
現代における「復讐」や「死」について、いろんな言い分を見れるのが興味深かったです。
裁判制度は被害者に不利とか言われたりしますが、
思いを晴らすのにこういう方法しかないのだとしたらやるせないなーと思います…。
だから彼は、せめてもと、還元キャンペーンをお見舞いされるんでしょうかね?
かなり重い設定の話でしたが、伊坂さんらしい読み口でするするっと読むことができました。
さらなる続編を期待します。また全然違う、死神・千葉さんの話を見てみたいな。