駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『豆の上で眠る』 湊かなえ

うう、また読み終えてからしばらく放置してしまった…。
感想が記憶の遥か彼方だ~><(懲りないなぁ(-_-))

本当に久しぶりの湊さん。
「告白」を読んであまりの衝撃に、そのあとの本が霞んでしまったという…(^_^;)
以来、しばらく読んでませんでしたが、友人から「結構よかったよ」と聞き、手に取ってみました。
なかなか面白かったです。
最後、真相に辿りつけば、色々無理があったりするわけですが、
冒頭から物語に引き込んで、一気読みさせてしまう力量は相変わらず素晴らしいです。
以前はいまいちしまりが悪いオチを残念に思いましたが、今回読んでちょっと認識が変わりました。
湊さんの作品は、少々オチが強引でも、それなりに納得できる理由がつけられればいいんじゃないか。
作者が書きたいのは、ミステリの真相のリアリティではなく、別のテーマだろうから。

<内容紹介>
行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。あなたの「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎。私だけが、間違っているの? 13年前に起こった姉の失踪事件。大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。押さえつけても亀裂から溢れ出てくる記憶。そして、訊ねられない問い――戻ってきてくれて、とてもうれしい。だけど――ねえ、お姉ちゃん。あなたは本当に、本物の、万佑子ちゃんですか? 


(ちょっとネタバレ気味の感想です…。未読の方はご注意を!)



今回のテーマはラストの一文、「本ものって、何ですか───。」でしょう。
タイトルの由来にもなってるアンデルセンの童話、「えんどうまめの上にねたおひめさま」は、
昔読んだことがありました。
童話は少々不可解なお話が多いですが、これはまた一層風変わりなお話だなと思ったことを覚えています。
アンデルセンにしてはすごくシンプルなお話ですね。
それを元に「ほんもののおひめさま」と、背中の豆の違和感を上手に絡めて描かれてます。
こういう童話ベースのお話は好きですねー(^^)

何枚も重ねた布団の下の小さなえんどう豆を背中で感じるような、わずかな違和感。
姉が幼いころに行方不明にあったと語ってるけど、現在ではこれから姉に普通に会う様子。
「ああ、結局無事だったのね」と安心させておきながら、奇妙な記述を挟んでいって
「お姉ちゃんは無事だったはずよね??」と読者を惑わす微妙な不穏感。
巧いなぁ。

物語にぐいぐい引き込まれちゃうのは、描写にリアリティがあるからなんでしょうね。
大筋や設定はかなり無理があるのに(^_^;)、細部を描くのが本当に巧い。
お母さんの奇怪な行動なんて現実には「ないない」って思うのに、
読んでいくと「いや、人間追い詰められたら何しでかすかわかんないもんな」とも思えてしまう。
そういう、人間が踏み外す一歩目の、微妙なラインの描写がうまいんだと思います。

結衣子は本当に気の毒でした。
真相から遠ざけられていたため「違和感」を感じ、「本もの」に固執して追及していく。
そして真相が彼女にハッピーエンドをもたらさないのがまた切ない…。
そしてそれが彼女を守るための嘘ではなかったことも。
彼女の本当の「本もの」探しは、これから始まっていくんでしょうね…ちょっと鬱々としてしまうな…。

気の毒なのは結衣子だと思うけど、自分が母親なので、
つい結衣子の母親の立場って…って思ってしまいます。娘、両方取られちゃってるよ…(>_<)

お話としては強引なところがあり、湊さんの本としてベストな作品ではないでしょうが、
それなりに面白くて、また湊作品を読んでいこうかなと思えました。