駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『空棺の烏』 阿部智里

ぐあー、読み終わってしまった><続きはあと一年後だなんて、そんな殺生な!
と、読み終えて叫んでしまったくらい楽しみにしているシリーズです。
好きすぎて、毎回前作を復習してから読んでます(^^)
八咫烏シリーズ」という名前もついたようですね。すっかり人気シリーズになりました。

これから読まれる方のために書いておきますと、
発刊順番は「烏に単衣は似合わない」「烏は主を選ばない」「黄金の烏」「空棺の烏」となります。
一応それぞれ完結してますが、ぜひ順番にどうぞ。
シリーズに番号を振ってないことと言い、丁寧に構築された世界と言い、
巻ごとに違った顔を見せてくれることと言い、「十二国記」を彷彿とさせますね。
こちらのシリーズは、是非完結までこぎつけていただきたいものです…(^_^;)


<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
八咫烏の一族が支配する世界山内で、宗家を守るのは山内衆と呼ばれる上級武官。勁草院という養成所で厳しい訓練がほどこされ、優秀な成績を収めた者のみが護衛の栄誉に与る。平民の茂丸、下人の千早、大貴族の明留、そして武家の雪哉。生まれも育ちも異なる少年たちは、勁草院の過酷な争いを勝ち抜き、日嗣の御子を護る武人になれるのか…?「八咫烏シリーズ」第四弾。


雪哉…あんた名前は真っ白なのに、腹ん中真っ黒だね、真っ当に烏だね。
そんな雪哉の学園生活を面白楽しく描いた今作!(違う!!)
そう、まさかの学園ものなわけです。まあ、前作ラストで仄めかしてましたけどね。
このシリーズは、毎回違った趣向で楽しませてくれるなぁ。
物語は雪哉が主役なんだけど、まあ彼はアレだから…(あえて伏せておきます)、
新たに登場してきた勁草院の面々が楽しかったです。
生徒も先生もみんな個性たっぷりで、そういういかにも学園ものなノリを楽しみました。
このシリーズはファンタジー世界の作り込みに感心させられるんですが、
今回舞台となる勁草院も、さすがきちんと細かく作り込まれてて、面白かったです。
でも、この一冊で勁草院が舞台の話は終わっちゃうのかな、もっと読んでいたかったなぁ。

新キャラたち、みんなよかったです。明留の成長ぶりなんか面白かったですし。
前作、雪哉が表紙で着ててぼろぼろにしちゃった赤い晴れ着は、彼のものだったんですね(笑)
そして今後彼らが、若宮の戦力となっていくんですねー。
今まで護衛と言えば、澄尾しかいなかったですからね(涙)。今後の彼らの活躍が待ち遠しいです(^^)/


(以下、少々ネタバレ気味の感想です。未読の方はご注意を)


雪哉…あの反則的なぶっち切りぶりはなんなんでしょ。
いや、これまでも才能を秘めているようなことは書かれてましたけど、
あれかなぁ、やっぱ若宮との接触が彼をあそこまでにしたんでしょうか?
垂氷にずっといたらあんな人にはならなかったでしょうからね。
小憎たらしい程度だった少年が、化け物じみてきたじゃないですか。
あまりの雪哉の隙のなさぶりに、やりすぎな感を持たないわけではなかったけれども、
でもまあ、このお話は雪哉が少々すごくなろうがどうしようが、
それが大した影響を与える類のものではないですからね。
シリーズ自体は勁草院がメインの話ではなく、一番の焦点は猿対烏ですから。
この雪哉をして、それでも圧倒的な怖さを見せつける猿。今後の展開がますます気になります。

少年だった雪哉も、成長したラストでは風貌もがらりと変わってきたようで、
こののちの変化を思うと楽しみなような、少し気の毒なような。
いずれ若宮が頼みにできるような男になっていくんだろうけど、
山内の危機的状況が雪哉を化け物にしていくんだともいえるわけですからね。なんか皮肉だなぁ。
でもそのための今回の話だったのかもしれませんね。
雪哉を、ただの雪哉として接してくれる仲間をここで得たんですものね。

路近がねー、なんかずっと得体が知れない感じなんですよ。
今回、ちょっと怪しげな振りがあったから、
「おお、とうとう来たか!?路近が裏切るか?」とハラハラしたんですが、結局、問題なしでしたね。
ホッとしたような拍子抜けのような…。
でも前の金烏の怪しげな話も出てきて、どうも南家が関わってるようだし、
やっぱ路近はなんかあるんじゃないのかなーとまだ疑いが晴れないでいます…。
非常に頼もしい存在なので、敵方に回ってほしくはないんですが。

今作は、勁草院が舞台の番外編のような話か思いきや、ラストで本編に切り込んできましたね。
残りページが少ないところでの突然の展開に驚きました。
でもこのシリーズは、謎の引っ張り具合とばらし具合が巧いので、ワクワクしながら引き込まれていけます。
八咫烏…三本の足は天地人を表すという…ということで、烏・猿・人間と絡んでくるのかな。
そういうこの世界の根本にかかわるお話は、エピソード0と称す次作で明らかになってくるようです…。
はあ、待ち長い。