駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『聖母』 秋吉理香子

感想難しいな…。

まごうことなき、「どんでん返し」のミステリですよ。
過去二作読んできて(デビュー作のみ未読)、文章も構成もこなれてきたので、評価したい半面、
成立するか否かの反則気味などんでん返し、子どもに対する猟奇的殺人という要素…など、
後味の悪さにちょっと引いた部分もありました。
(人が殺されるのが苦手なんです><だったらミステリ読むなってね…(^^ゞ)

うん、「読者をあっと言わせるミステリを書きました」というならありなんだろうな。
そういう意味では「暗黒女子」に近い感じですよ。
でもあれは舞台が完全にファンタジーな感じで、お話として楽しめたけど、
今回は作りや文章がうまくなった分、リアリティも出てきて、完全にエンタメとして読めなかったからなぁ…。
やっぱり子どもが殺されるのなんかは読みづらいな…。
でもラストからタイトルに結び付けていくくだりなど、巧妙にお話を作られていて、巧さがあると思いました。
よくできたミステリだと思います。(ツッコミどころは何点かありますが…)


<内容紹介>
東京都藍出市で、幼稚園児の遺体が発見された。被害者は死後に性的暴行を加えられていた。
事件のニュースを見た主婦・保奈美は、大切なひとり娘は無事だろうか、と不安に陥る。
警察は懸命に捜査を続けるが、犯人は一向に捕まらない。
娘を守るため、母がとった行動とは。『暗黒女子』の著者が放つ驚愕の長編ミステリー!



以下、完全ネタバレの感想です。文字を反転してます。
未読の方は絶対に読まれませんように!


一つ目のトリック(真琴が女性)には、引っかからなかったんですよね。
真琴に対して男性でも女性でもとれるような微妙な書き方してたから怪しいなぁと思って。
警察の人が真琴に「田中くん」って呼んだときにあれ?違うのか?って思ったけど、
彼は同僚の女性刑事にも君付けしてたんですね。
それには気づかなくて、「あれ?あれ?」って思いながら読んだわけですけど。
(だから「引っかからなかった」というと少し語弊があるんですが)
でも、もう一つのどんでん返しにはやられました。
いや、ちょっと引っかかった部分はあったんですよ。
保奈美が、男でも女でもいい名前を付けたってとこで「あれ?」って思ったんです。
これは真琴のことでは?と。
で、真琴の優しそうな母は保奈美っぽい…これは時系列をずらしてるのか?
いやでも蓼科の事件は共通してるし、あれ?違うか、って、そこで追及を断念しました。
保奈美と真琴を結びつけるのはやっぱ難しいですよねー。
保奈美サイドからは真琴の姿は全然描かれてないし、保奈美の娘は薫だと思い込んでるし。
でもまあ、親と同居してるのに殺人に気づかないのか、などの不審だった点は納得できたわけですけど。
蓼科への保奈美の態度に矛盾はなかったのかなぁ?確認する暇なく返しちゃったな。

子どもを殺すなど、心情的にはついていきにくい展開ではあったわけですが、
その理由はそれなりに理解できたし、不妊で苦労した親が、強姦による妊娠の出産をすすめる流れなど、
説得力はあるよなーと感心しながら読んでました。
散々苦労して授かった保奈美が、わが子のためならなんだってするという言葉も
ちゃんと伏線になっていたわけですしね。

なんだかんだ言って、実力のある作家さんだと思います。
次回が出ればまた読むでしょう。
毎回作風が違っているので、願わくば次作は陰惨な話ではありませんように…。
ああ、でもカテゴリーとしてはイヤミス作家になるのだろうから、それは覚悟せねばならんか…。