駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『象られた力』 飛浩隆

ああ、またSF作家さんにガツンとやられてしまった。
こんな作家さんに出会うと、私本当はSF好きなんだろうか、と勘違いしてしまいます。
(文系なので基本SFは苦手なんです…)

設定からすごいし、展開がすごいし、SF的展開に不慣れな私は最後見失いそうになるけど、
読後の充実感は半端ないです。

特にお気に入りは最初の「デュオ」。
読んだ後は大興奮でしたよ。なんなんだこれは、なんなんだこれは、と。
最初の設定から度肝を抜かれましたが、そこから始まる予想を超える展開は、それはそれは刺激的で、
ハラハラしながらの読書でした。
全編に漂う妖しい雰囲気がまたたまらない。
私の中ではこの作品がピカイチでした!
ピアニストが主題のお話でSFっぽくないのも、私にはとっつきやすかったのかも。
とはいえ、ピアニストが主題とは思えぬほどに、予想もしない展開を見せてくれるのですが。
その奔放さこそがSFならではなんだろうなぁ。
SFと言えば「宇宙」と思ってしまう安易な私ですが、人体も小宇宙だと言いますもんね。
人間というのも、未知なる世界なわけですよね。
はぁ、どっぷり堪能…。

「呪界のほとり」
最初はドラゴンなんて単語が出てきて、
ファンタジーのゲームのような舞台設定だと思ったら、とんでもない世界が隠されていましたよ。
正直、最後話についていけず、理解不能に陥りました…。
雰囲気だけ味わったんですが、こういうの読むとやっぱりSFは難しいなぁと
苦手意識を持ってしまいますね…(^_^;)

「夜と泥の」
これはねー、結構好きだったんですよ。
最初、世界観がよくわからなくて混乱したんですけど、
その舞台が見えてくるようになるとその映像に圧倒されちゃいました。
ほんとこの方とんでもないこと考えられるな。
惑星のテラフォーミング(地球化)、人類の希釈などなど、
あり得そうな未来図を見せつけられるのがとても刺激的。
ずっと未来なのに、太古の様子を見ているようなそのねじれ感がたまりませんでした。

「象られた力」
これも面白かったです。
この作家さんは比較的SFの専門用語が少ないので、文章が読みやすいし、話に入っていきやすいです。
入っていきやすいとはいっても、図形言語だなんて概念がすっと把握できるわけではないですが。
平易な言葉でとんでもないこと言ってたりしますよね。
でも活字好きはなんとなく引き込まれちゃう世界ですね。
わからないなりにも一生懸命ついて行った感じです。
と言っても、ラスト辺りのSF的展開には脳みその想像がついていけなかったんですが。
でも肩すかしのようなオチも含めて、読み応えがあって面白かったです。

とても寡作な作家さんのようで、出されてる本も少ないようです。
他のも読んでみようかなぁと思うのですが、シリーズものなので、
完結までいつになるかわからないと思うと手が出しにくいですねぇ。
こんなすごい作品書かれるのに、それに比べると認知度が低い気がします…。(私が知らなかっただけ?)
もっと広く読まれてもいい作家さんだと思います。SFから縁遠い私が言うのもなんですが…(^_^;)