駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『機龍警察 暗黒市場』 月村了衛

実は去年の年末に読んだ本。
坊っちゃん」より前に読み終わっていたのですが、記事にしそびれていました(^_^;)

さて、久しぶりにこのシリーズを読んでみて、やはり月村さんのこのシリーズは鉄板だと思いました。
「土漠の花」読んだときに、「月村さんってこんなもんだったかなぁ?」と思ったのですが、
その感覚は間違いじゃなかった(笑)
今回読みながら、「やっぱこうだよ!」とその面白さに興奮気味でしたもん。
でもSFとは思えぬこのシリーズのリアリティぶりは、
やはりこの舞台でこそ映えるものだったのかも、とも思いました。
このシリーズの、現代から繋がっていくリアルな土台が非常に効果的なんですよね。
(土台というのは、日本の警察体質そのものだったり、今回であればロシアであったり)
その土台があるから、劇的な、ある意味作られたような展開も嘘くさくなく映えるんだと思います。
だから現代が舞台の「土漠の花」のリアリティのもの足りなさには、がっかりだったんですが、
やはり現実舞台でフィクションを描く難しさというのがあるのかな。
フィクションがどうしても嘘くさくなってしまいますもん。私の中で評価が下がるのも仕方ないのかな?
…だけど、それを差し引いても、物語の書き込み具合、キャラクターの作り込み具合など、
こちらシリーズの方が段違いに素晴らしいと思うのですが、そこはシリーズファンの贔屓目なのかしら??

前置きが長くなりました(^_^;)
要するに今作も非常に楽しませてもらった、ということです。文句なしに面白かった。


<内容紹介>
警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ元警部は、旧知のロシアン・マフィアと組んで武器密売に手を染めた。一方、市場に流出した新型機甲兵装が“龍機兵(ドラグーン)”の同型機ではないかとの疑念を抱く沖津特捜部長は、ブラックマーケット壊滅作戦に着手した―日本とロシア、二つの国をつなぐ警察官の秘められた絆。リアルにしてスペクタクルな“至近未来”警察小説、世界水準を宣言する白熱と興奮の第3弾。


前回はアイルランド出身のキャラクターであるライザがメインのお話でした。
ちょうど同時期にアイルランドの歴史ものを読んでいたので、
ライザの背景が本当にしっかりを作り込まれていることに感心したんです。
彼女は自分の過去だけじゃない、アイルランドそのものの過去を背負って描かれていたんですね。
今回の主役は元ロシアの警察官だったユーリ・オズノフ。
ロシアについては全然詳しくないので、ライザの時のような納得感はなかったのですが、
ライザ同様、彼もただのロシア出身キャラというのではなく、
ロシアという国を背景に生きてきたということがじっくり描かれています。
ロシア文学でかじる程度の私の知識ですが、ロシア人気質や風土みたいなのが感じ取れた気がします…。
そういうのまで織り込んで描かれるくらいの緻密さがありながら、ストーリーが滅法面白い!!
このエンタメ性は素晴らしいにつきますね。
時には、お決まりな展開なとこもあれど、それまでの積み重ねが巧いので、
読んでる方は「きたきたー」って感じで爽快感を味わえます(^^)
「痩せ犬の七か条」、「影と灯火」、その他伏線もろもろ、読み手を引き込む手腕には唸るばかり。
これだけシビアな題材揃えてるのに、こんなに熱量持った熱いストーリーを作れるのは、ほんとすごい。
内容濃すぎて、どこから触れればいいのかわからず(苦笑)……ぜひ読んでお確かめください!!

ユーリ、最初いきなり警察をクビにされるところから始まるんですよね。おお、いきなりげっそりしてるぅ。
そんな彼の大変な現状と、過去が語られていくのですが、やがてそれが交じりあう…。
過去話から、ラストにバトルシーンを持ってくるなど、作りとしては前作と同じだけど、今回も充実の出来。
SFとかメカものとかいうより、がっつり警察ものになってます。
他のクールなメンバーに比べると、人間臭いユーリの不器用さがいいんですよねー。
その他のキャラたちもだんだん愛着も湧いてきましたし、続きがますます楽しみだ。

手に汗握るバトルシーンは是非是非映像で見てみたい!
未だに機龍兵とかキモノとかをうまく想像できないんですよー><
そんな貧弱な想像力の私のために、ぜひアニメ化を熱望します!!