駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『黒猫の回帰あるいは千夜航路』 森晶麿

やっぱいいなぁ、黒猫シリーズ♪今作も期待を裏切らなかった!!

1作目があんなに難解だったのを思い出すと、本当にずいぶん読みやすくなったなぁと思います。
それでいて読み応えもあって、やっぱり森さんはこのシリーズが一番。
ミステリ部分は相変わらず美学主体で一筋縄ではいかないけれど、
今回のは結構理解しやすい方だったと思います。

もう二人のじれったい関係もいい意味でマンネリ化してきたなー、と読みながらにまにま。
すっかりこのペースに慣らされてしまった感じで、
じわじわとくる黒猫の愛情にニヤニヤしながら心地よく読んでいました…。

…なんて、気を抜いてたらっ!!!エピローグでやってくれましたよ、黒猫さんがっ><
読みながら「うわっ」なんてホントに声が出ちゃって、「どうしたの?」と家族に聞かれ、
「何でもない…」とにやけた顔を隠すのに苦労しちゃったじゃないか!
おお、なんすかこの二人にあるまじき急展開はっっ。
いや、これまでじれったく見守ってきたファンとすれば大喜びですけど、大歓迎ですけどもーーーっ><
色々詳細に書かないのがまた森さんっぽいというか、黒猫らしさというか。
ちゃんと明確に書いてくれないと、勝手に色々妄想を膨らませちゃうじゃないか。
と、そんな感じで、今回は黒猫の子供時代も拝めて、ファンにはたまらない一冊となりました(笑)

今回も知らないポー作品ばかりでそこはちょっと残念。
あらすじがやたら面白そうなだけに、読みながら本編のミステリと同じくらい、
引用されたポー作品が気になってしまった。
またポーの作品集読まなきゃな。

収録作品は短編6編とエピローグ。
以下、簡単な感想をば。

「空とぶ絨毯」(ポーの引用作品『シェヘラザーデの千二夜の物語』)
このシリーズでしか成立しえないミステリ。っていうか、真相読んでもちょっと理解しきれなかった。
小柴教授の思考についていけない…。
まあその教授も真相は黒猫くらいしか解体できないって言ってるから、いいのかわからなくて。
まあいいのだ。黒猫と付き人ちゃんが会話してるだけでファンは満足なのだ(笑)

「独裁とイリュージョン」(『お前が犯人だ』)
一作目に登場したというミナモ再登場。(しかしもう一作目はほとんど覚えていない…)
これは比較的わかりやすくて面白く読みました。
まあずるいといえばずるい真相かもしれないけど、
死人が出てそうでも大騒ぎしてない様子でなんとなく先が読めた感じでしたしね。(でも真相はわからなかった)
しかしここで描かれたラストが最後でああも化けようとは…恐るべし…。

「戯曲のない夜の表現技法」(『ハンス・プファアルの無類の冒険』)
これはちょっとひどいと思ってしまった。
偉大なる愛ゆえの大掛かりな仕掛けともいえるのだろうけど、
これ食らったら私なら人間不信に陥るレベルのショックを受けるのだけど…。
芸術家の愛は妙に捻くれてるなぁ…(^_^;)
一作目の舞踏家さんも難解な愛を受け入れていたけれど、一般人には芸術家の愛は受け入れがたいなぁ。
でも自分は無関係なので面白く読みましたよ(^^)/

「笑いのセラピー」(『タール博士とフェザー教授の療法』)
この話は好きだったな。(話の中にひどい部分はあるが…)
小学4年生のかわいい黒猫が見れるのも良かったけど、冷花さんも相変わらず変わりもので面白かったし。
で、黒猫はこの頃からパフェ好きでニワトリ好きであった…と。

「男と箱と最後の晩餐」(『長方形の箱』)
ミステリよりも黒猫と付き人ちゃんのやり取りをひたすらにまにま楽しんだ話(笑)。
だって二人で豪華客船に乗ってんだもの。
んで、相変わらず初々しいぎくしゃくした会話してるんだけど、
この本を最後まで読んだ後に読み返してみると結構雰囲気が変わってくるんですよねー。
あちこち気になる記述もあったり…。
あれほど、確信的な一夜を過ごしながら」なんてありますからね、最初は前作の?って思うけど、実は…!?
そうすると、最後のシーンもね…。なんだちゃんと着々と二人の仲は進展してたんじゃないか。

「涙のアルゴリズム」(『メルツェルの将棋差し』)
この話もなかなか面白い仕掛けがあって楽しめました。
AIと芸術家の作曲対決に、まさかこんなオチが待ってるなんて。
最初の話に「回帰」していくのも、構成として森さんらしいですよね。

エピローグ
ここで爆弾でしたね。
こうやって少しずつ進展するんだね、この二人は。と見守ってきたつもりだったのが、ここでどかんと。
いや、びっくりしましたよ、わずか数ページを何度も読み返しましたよ。
そしてそれ以前もざーっと読み返して、色々思わせぶりな記述に勝手に妄想膨らませて、
一人悶えてしまいましたよ!!
そして、最後の一行!!黒猫は何と言ったんだーーーー。なんでそこで切るんだーーーー!!
いや、そのじらしっぷりがいかにも森さんで、そしてそれにまたやられちゃうんだけどさ(涙)
だから森さん、これで最後とか言わないでね。ちゃんとその先を書いてね。お願いしますよ、ホント。

というわけで、シリーズファンとしては嬉々として楽しみました♪
また一冊目から読み返したくなっちゃったなぁ。っと、その前にポー作品読破か?