駄文徒然日記

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『あきない世傳 金と銀 源流篇』 髙田郁

髙田郁さんですよー。やっぱよかったぁ。
心地よい丁寧な文章は相変わらず。読んでてしみじみして、ジーンときちゃうんですよね。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道か―大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!


時代は「みをつくし」シリーズより少し前になるようですが、
雰囲気としては続編を読んでるような、いい意味での慣れがあり、心地よかったです。
前シリーズの主人公・澪は大阪から江戸に出てきましたけど、
今回の主役である幸は兵庫から大阪に出てきます。
同じ関西とはいえ、幸は学者さんの家の出で、言葉が訛ってないんですよね。
そういうギャップが澪と逆のようで、リンクしているように感じました。
というわけで、「みをつくし」シリーズが完結して寂しいファンにとっては、うれしい新シリーズのスタートです。



(少しネタバレ気味の感想です。未読の方はご注意くださいね)



話は朝ドラの「あさが来た」を彷彿とさせたなぁ。
大坂商人の家が舞台で、商才を秘めた主人公。女が商いなんて、と言われる時代に、さて彼女の道は?
商人の家なのに、全く商売に関心のない智蔵坊っちゃんに、
「あさが来た」の新次郎さんを重ねたのは私だけじゃないはず。
でも幸には決して、あさちゃんのような破天荒さや、猪突猛進するような力強さはありません。
だからなのかな、幸が自分のことを理解してくれる人と次々に離れてしまう羽目になってしまうのは。
そういう、たくさんの人の期待や温かみを背負ってからこそ、幸はようやく前に進んでいけるのかもしれません。
こんな控えめな性格では、一人じゃ、女性蔑視な時代に流されるままだったかも。
自分の欲求だけでは開けない険しい道ですから、彼女にはそれ相当の覚悟を背負わせねばなりませんものね。
にしたって、一巻だけでここまで苦労を背負うんだから、この先の道の険しさは察するに余りあるなぁ…。
髙田さん、どうぞお手柔らかに…。って、一巻の終わりからすでに、気を揉む展開なんですが…(>_<)

幸の外見の描写を見て、なんとなく北川景子さんを思い浮かべました。
北川さんは「みをつくし」シリーズのドラマで、下がり眉で決して美人ではない澪を演じ、
最初ミスキャストのように言われましたけど、とても真摯なよい演技をしていました。
高田さんが今度は逆に北川さんをイメージして書かれたかのかなーなんて思ったわけです(^^ゞ
幸は別嬪さんですしね。

毎回短編4本で構成されていた「みをつくし」シリーズに比べると、今作は少しテンポの悪さを感じますが、
まあ、じっくりのんびり読み進めていけばいいのかな?
それでもいかにもな、「次巻へ続く」といった感じのラストはどうかな、と思いました…。
シリーズものでも、一冊ごとにとりあえず完結してほしかったな。
でもこれから楽しみに追いかけていきたいと思います(^^)/