駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『また、同じ夢を見ていた』 住野よる

前作「君の膵臓をたべたい」が意外と面白かったので(失礼…(^_^;))、今作も気になって借りてみました。
前作は、ラノベ感満載で中高生向けだなーと、対象年齢外な違和感を少々感じながらの読書だったんですが、
今作の主人公はさらに下がって小学生。
本の対象としては同じく中高生向けくらいなんでしょうけど、子どもの一人称は児童書のようで、
読んでてちょっと辛かったです…。
それでも、前作読んで、青春ものがお得意なのかと思っていたので、二作目、子供が主役なのにびっくり。
そして子供だからというだけじゃなく、二作目にしては雰囲気がずいぶん違うことに驚きました。
なかなか幅広い作家さん、なのかな。そこに感心しました。


<内容紹介>(amazonサイトより)
デビュー作にして25万部を超えるベストセラーとなった「君の膵臓をたべたい」の著者が贈る、待望の最新作。
友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女、一人静かに余生を送る老婆。
彼女たちの“幸せ"は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今"がうまくいかない全ての人たちに送る物語。



「幸せとは」「人生とは」という問いかけには、人の数だけ答えがあると思います。
主人公である奈ノ花が、学校で出された「幸せとは」という問題に、
健気に丁寧に向かっていく様が、微笑ましくも、頼もしかったです。
そして彼女の口癖の「人生とは~」の、お遊びのなぞかけのようなセリフも、
軽やかだったり奥深かったりで、面白かったです。
決まった答えがない問いだからこそ、誰もが真摯に自分の答えを求めて、向き合わなきゃいけないんでしょうね。
しあわせはあるいてこないーと歌いながら、幸せに向かって歩いていく彼女の姿がすごく眩しかったです。



(以下、ネタバレ全開の感想です。未読の方は読まれないでください!)







奈ノ花が出会った彼女らは、奈ノ花自身でした。
彼女らの世界は、それぞれパラレルワールドのような関係なんでしょうね。
この道の先に起こり得る未来の姿って感じでしょうか。
孤独な菜ノ花が彼女たちのために会いに行き、孤独な彼女らも奈ノ花のために会いに来てくれたのでしょう。
幸せは待ってても歩いては来ないですから。そして、それぞれが互いに救い合っては、離れていきました。
「幸せとは」という問いかけに、彼女らは自分自身の答えを見つけようとします。
「幸せとは」という、自分の中の定義を見つけられるということは、
自分の中に揺るぎない指標をもつということなんですね。
それは人が「幸せになるために」必要なことで、自分を幸せにできるのは、自分自身であるということなのです。
そして自分自身である奈ノ花(たち)は、互いに十分に向き合って、
やがて自分以外の他者との関わりに目を向けていくわけです。
「幸せ」を追及していったら、自分一人では成立しえない、
他人とのかかわりの中で得るものだということに気づくからですね。
奈ノ花が桐生君のために葛藤するエピソードが一番印象的でした。
「皆違う。でも、皆同じ。」ということに気づいて、
奈ノ花の目線が内から外へと向いていく過程が丁寧に描かれていて、じわっときました。

ただ今作の仕掛けにはちょっと違和感がありましたね。
奈ノ花が彼女らをわからないのはありだとして、彼女らは一目見て気づかないものかな、と思ってしまいました。自分の小さい時の姿のはずですよねぇ。(おばあちゃんはわかってたのかな?)
そことこがよくわからなかったです。だからこの話の仕掛けが判明してもなんかすっきりはしなかったなぁ。

あと、親目線で読んでしまう私は、作中のひとみ先生みたいに、
温かく見守れる大人になりたいなぁ、としみじみ思ったのでした。

胸に刺さってきたのは、前作の方でしたが、今作も悪くなかったです。(何気に上から目線…(^_^;))
前作との違いを思うと、次にどんな話を書かれるのかとても楽しみです。