駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『奥様はクレイジーフルーツ』 柚木麻子

以前、柚木さんの「その手をにぎりたい」を読んだときに、ちょっと官能っぽい雰囲気があって、
「おお、柚木さんこれから大人の恋愛ものとか描かれていくようになるのかな?」と思ったので、
今回読み始めて、「柚木さん、大人向けバージョン来たか!?」と思いました。


<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
夫と安寧な結婚生活を送りながらも、セックスレスに悩む初美。同級生と浮気未満のキスをして、義弟に良からぬ妄想をし、果ては乳房を触診する女医にまでムラムラする始末。この幸せを守るためには、性欲のはけ口が別に必要…なのか!?柚木がたわわに実る、果汁滴る12房の連なる物語。


最初こそは、これまでの柚木さんっぽくない題材だったので、ドキドキそわそわしながら読んでいたのですが、
次第にノリがなんかコメディっぽくなってきて…最後まで読むとやはりしっかり柚木作品だな、と思ったのでした。
読みやすくて、面白かったですよ。

セックスレスが題材なので、最初はびっくりしました。
セックスレスが災いして、中二男子ばりになんでもかんでもすぐ性的なものに結び付けていく初美に、
最初は引き気味だったんですが、読んでいくうちに段々その空回りっぷりがかわいく見えてくるんですねぇ。
なんかその必死さが愛おしく思えてきました。
なので、途中から初美と一緒に、初美に手を出してくれない旦那に腹を立ててました(笑)
こんなに初美が頑張ってるんだから、応えてやれよ~みたいな。
超短編が全部で十二編。それだけの失敗(?)バージョンを並べるすごさに感心。
どれもバラエティー豊かで、話が進むごとに初美自身にも変化があるので、
飽きることなく、最後までするするっと読めました。
この読ませるテクニックはさすが柚木さん!
さらに、官能とフルーツを重ねて描く巧さは、さすが食べ物描写巧者の柚木さんですね。
果物ってこう描かれるとなんかホント、エロティックですね(笑)
タイトルも、読んでる途中から「そのまんまじゃん」と思えて、面白かったです。

初美にあまり共感はなかったですけど、女性の悩み相談みたいなのを検索してみると、
初美と同じ悩みを抱えてる人が少なくないようで、思ったより身近な問題なのかなと思いました。
実際、私の周りでも、レスが理由で離婚したとか、
性の問題で、それ以外に問題のない彼氏と別れたとか聞いたりしたので、
当人たちにとっては、想像以上に重要な問題なんだろうと思います…。

そんなデリケートで深刻な題材なんですが、柚木さんの手にかかると、色んな蓋をしてしまいがちな問題も、
こんなに明け透けになって、真っ当に向き合うことができるんだと思えました。
この本が、リアルに悩んでいる人の参考や共感になるのかどうかは、私にはわかりませんが、
読み物として見ると、上手に構成されていて面白く読めました。
日常の問題に対して、段階を追ってそれを乗り越えていくっていうのは、
柚木作品の醍醐味の一つでもありますね。

次に読むのは、たまたま柚木さんが重なって、「幹事のアッコちゃん」です。
雰囲気はガラッと違うけれど、問題を解決していく作りはこちらが本家なくらいなので、
読むとすっきりするだろうな。楽しみ楽しみ。