駄文徒然日記

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『黒猫の約束あるいは遡行未来』 森晶麿

わーい、黒猫シリーズの新刊!「偽恋愛小説家」も面白く読んだけど、やっぱ森先生の本領発揮はこっちだ!
小難しい美学論は、正直半分も理解できてるかどうかわかんないけど、
そんなこねくり回した言葉に翻弄されるのはやっぱり楽しい。
いつもに比べるとポオの比重が軽めな気もするけど(長編だとどうしてもそうなっちゃうのかな)、
糖度は相変わらず、にまにまが止められなくなるくらい高めだし、付き人ちゃんの成長著しくて頼もしいし、
黒猫の態度は巻を増すごとにあからさまになってくるし、追いかけがいのあるシリーズですね(^^)/

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
仏滞在中の黒猫は、ラテスト教授からの思想継承のため、イタリアへある塔の調査に向かう。建築家が亡くなり、設計図すらないなかでなぜか建築が続いているという“遡行する塔”。だが塔が建つ屋敷の主ヒヌマは、塔は神の領域にあるだけだと言う。一方、学会に出席するため渡英した付き人は、滞在先で突然奇妙な映画への出演を打診され…。離ればなれのまま、ふたりの新たな物語が始まる―。人気シリーズ第5弾!

ああ、もう5冊目にもなるのね、このシリーズ。
「約束」という言葉は切ない響きがありますが、まさにそんな感じなお話でした。
二人別々の地で、それぞれの物語が始まるのは、「時間旅行」の時と似ていますが、
今回はまた違った展開で…(にまにま)。教授お二方、グッジョブです!
ラストはちょっと切なさに涙が滲んじゃいそうになりましたけどね。どこの「東京ラブストーリー」だ。

美学ミステリということで、いつものごとく「そんな理由で殺人が起きては困ります」な動機だったりします。
こんなこと、実際にはあり得ないし、あってもらっては困りますが、
このシリーズだからこそのお話なので、不思議な塔も、あり得ない天才的計画も、
美学ミステリというフィルターを通じて見ることで、この作品世界に浸って楽しみました(^^)
屋敷の方々の謎だけはなんとなく勘付いたけど、やっぱ真相までは見抜けませんでした~。
付き人ちゃんと黒猫のじれったい関係も、ポオ作品の絡みも、美学解釈も、
相変わらずのこのシリーズらしいお話で、シリーズファンとしては読んでて満足でした。
(今回のポオ作品は「メエルシュトレエムに呑まれて」を取り上げてました。…くっ、未読><)

付き人ちゃんと黒猫の関係をじれったく思ったりするけど、
15年越しの、さらにまだるっこしい想いもあるということだし、
それに比べるとましなのかなぁなんて…いや、やっぱりじれったいよっ!!
普段から回りくどく物事に当たる二人だから、恋愛も非常に回りくどい!(笑)
まあ、このシリーズはそれだからいいんですけど。
今回もじれったくって、うずうずしちゃいました。
でも、付き人ちゃんの成長よりもうんと遅々としているとはいえ、ちゃんと進展はありましたしね。
相変わらず、読み終えた直後から、続きが気になるシリーズであります…。
作中の、トッレ監督の映画、ぜひ見たいな。
本編ではなく、エキストラな黒猫の、あの場面をぜひ拝みたい!