駄文徒然日記

移行したばかりです。これから整理していきます。

『とっぴんぱらりの風太郎』 万城目学

 
(すみません、ネタバレありの感想です。未読の方はご注意ください…)
 
 
万城目さんの本ということでしたが、今までのとは一味違うそうなので、心して読みました。
忍びといい、大坂城といい、なんだかハッピーエンドな気がしない…。
そして、予想通りというか、想像以上の壮絶さでした。
いやー、やられた、そして面白かったです。

<内容紹介>(「BOOK」データベースより)
天下は豊臣から徳川へ―。重なりあった不運の末に、あえなく伊賀を追い出され、京(みやこ)でぼんくらな日
々を送る“ニート忍者”風太郎。その人生は、1個のひょうたんとの出会いを経て、奇妙な方向へ転がってい
く。やがて迫る、ふたたびの戦乱の気配。だましだまされ、斬っては斬られ、燃えさかる天守閣を目指す風太
郎の前に現れたものとは?

ここんとこ時代物ばかり読んでいたので、物語にはすんなり入ることができました。
ただやたら長かったので、感想がうまくまとまりません…。
垂れ流し気味の感想になってしまいますが、ご勘弁を><
 
主人公・風太郎は、忍者という立場で、そういう育て方をされ、
決められた道を何も考えずに進んできたわけですよ。
しかし、ある日突然レールを外されます。
言われたことをこなすという生き方を失い、何をやってもいいというプータロー生活がいきなり始まるわけです。
大学生のモラトリアム・忍者版、みたいな。
自分が何をやりたいかわかんないし、かといって何でもいいわけでもないし、
あーもうわかんねーって感じで、日々をのらりくらりとやり過ごすわけです(笑)
あの分厚いページの三分の一は、このしっかりしない風太郎のせいですね(笑)
もっとちゃんとしろよ、風太郎~と思いつつ、なんとか周りが話を進めてくれます。
 
やがて始まるひょうたん作りは読んでて楽しかったです。
そこでもいい加減な風太郎に、ひょうたん大丈夫かなぁ、と代わりに心配になったりして。
このひょうたんは万城目さんらしかったですね。
いきなりしゃべりだして、「おお、ようやく万城目ワールド」と思いました。
風太郎が吸い込まれちゃったり、芭蕉扇のような風を起こしちゃったり、なんか西遊記めいてますね。
やりたくない仕事を脅迫されてやらされてるあたり、風太郎って悟空っぽい?
まあ、あんな無敵じゃないですけどね。
 
そしてねね様、ひさご様と魅力的な人物が登場~。
表面は気安い感じなのに、垣間見える大物ぶりがたまりませんでした。
特にひさご様は、蹴鞠の場面とラストの場面が対照的で、それがとても心に残りました。
何もかも受け入れてきた人なのだなぁ、と。
体以上の懐のでかさでした(涙)
 
魅力的と言えば、個性的な忍者たちも忘れられません。
蝉も、常世も最後は「忍び」という本来の道を投げ打ち、自分の道を見つけます。
任務の次に、生き残ることが最優先である忍びの道を捨て、
自分の選んだ誰かのために命を懸ける、という生き方を。
生きるということは、「ツナグ」ということ。
ひさご様から託されたその覚悟、そして「繋がっていくもの」は、蝉と常世にもきちんと伝わって、
そうした二人の決意は風太郎にもちゃんと繋がっていくんですね。
最後の大坂城の場面は涙涙でした…><
一人で完結する人生はなくて、ちゃんと生きていくというのは、
誰かのために自分ができることをして、繋いでいくことなのだな。
 
しかし黒弓だけは忍びになりきってなくて、そうやって最後にようやく道を見つけた彼らと違って、
自分の道をちゃんと生きてる子だったんですよね。
最後、わけわかんないままやられちゃったようで可哀想でした。
実はちゃっかり生きていた、と勝手に思ってます。
っていうか、実は登場からずっとなんかあやしい気がして、本当は裏があるんじゃないかと疑ってました…(^_^;)
本当にいい子だったのね、疑ってごめんね、黒弓(>_<)
 
果心居士は聞いたことあったけど、因心居士は創作かと思ってました。でも史料にあるものみたいですね。
秀頼が巨漢だったというのも史料にあるみたいです。知らなかったなぁ。
あと、戦国物はあまり読まないせいか、この本で初めて真田丸の出番に出会いました。
「おお、これが噂の真田丸~」とちょっと感動。しかしやられる方にしたらむごいですよね…(^_^;)
 
百が「風(ぷう)」と呼ぶのがかわいいな、と思ってました。
なので、ラストシーンはちょっと浸ってしまいましたよ。
まさかこの二人でのラストシーンになるとは思わなかったな…。
 
あと、残菊の存在が、ドラゴンボールの桃白白みたいだな、と思ったり…(笑)
(例えがいつもマンガですみません(^^ゞ)。
だって、それまでほんわかした空気だったのが殺し屋の彼の存在で、
ドラゴンボールの路線が変わっていったんですが、
まさにそんな感じで、そのくらい空気を変える存在だったんですよね。
残菊一派との闘いは、バトルマンガを見てるような描写でした。
万城目さんの作品はほぼ実写化されてますが、
この作品は映像化するならアニメの方が向ているんじゃないかなぁ~。
 
以上、つらつらと思い浮かぶまま書いてみました。
プリンセス・トヨトミ」に繋がっていくお話だということですが、
こちらは段違いの面白さでした。(「プリンセス・トヨトミ」は退屈だったんだもの…(^_^;))
私の中ではあまり評価の高くない「プリンセス・トヨトミ」ですが、
これ読んだ後だったら、もっと思い入れ持って読むことができるかな??(って、わざわざ読み返さないか(^_^;))
いやー、万城目さんの時代物いいですねー!
これからももっともっと書いていってほしいなあと思いました(^^)/